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【暮らし】

便秘に悩む、在宅介護 食事に苦労/下剤で便失禁

 在宅介護で多くの人が悩むことの一つが便秘だ。加齢によって筋力や直腸の弾力性が低下するのに加えて、のみ込む力が弱くなったり、寝たきりになったりすると、便通に必要な食物繊維の摂取や適度な運動が難しくなる。下剤を飲むと、今度は下痢や便失禁になることもあり、多くの人が悪循環に苦しんでいる。 (出口有紀)

 「おしりが痛い。助けてくださーい」。七年前、愛知県春日井市の男性(74)は、自宅のトイレで妻(68)が泣き叫ぶのを聞き、途方に暮れた。妻は八年ほど前にくも膜下出血で倒れ、現在は要介護5。男性が自宅で介護している。

 男性が初めて妻の便秘を知ったのは、妻が倒れてから。退院する一カ月前に食事ができるようになると、おしりの痛みを訴えるようになった。「それまでは知らなかったが、元気な時は腸内環境を改善するヨーグルトを食べたり、排便があった日をカレンダーに記録したり、対策していた」

 在宅になって主治医に相談すると下剤と便を軟らかくする薬を処方されたが、便がゆるくなりすぎて、おむつをしていてもシーツがべたべたになったことも。「私の顔色を見て妻の体が硬直して便が硬くなり、排便痛が起きる悪循環だった」と話す。

 妻はほとんど体を動かせないため、食事には気を付けた。便を軟らかくする水溶性食物繊維を含む野菜や海藻を取らせ、腸の働きを活性化させるオリゴ糖を含むタマネギも積極的に食べさせた。以前、妻が食べていたヨーグルトも毎日一個食べさせ、水分も取らせた。すると、半年ほどで毎日便が出るようになった。

 今はベッド脇に、おしりふきやビニール手袋、ごみ袋などを常備。「便がゆるい時には排せつ物を吸収するシートもベッドに敷いている。失敗の連続の中で知恵が出てくる」と笑う。

 薬の影響で便秘に苦しむ人もいる。同市の女性(67)は昨年夏、認知症の夫(79)の変化に気付いた。多動を抑える薬を飲み始めた直後から、毎日あった排便が三〜四日おきになり、便も石のようになった。夫は言葉が不自由で、便意があると落ち着きをなくし、おなかもぱんぱんに張った。

 主治医には「排便があるので深刻ではない」と言われ下剤を処方されたが、薬が効きすぎるため服用しなかった。知人に薦められた健康食品のジュースや整腸剤などを飲むと、一〜二日おきに軟らかい便が出るようになった。排便時には、夫が一人になれるよう気を付けている。女性は「私が夫の近くにいたり、デイサービス施設にいたりすると、便や尿が出にくくなるので、トイレの外で様子を見たりする」と話す。

◆医師・専門職と連携を

 高齢者の排便管理に詳しい東京都調布市の医師、西田伸一さん(61)は「在宅診療を受けている人の八割は、便秘に悩んでいる。医師は下剤を処方するだけでなく、患者の排便のペースをつかみ、訪問看護師が入る時に排便の機会を調整するなどすれば、介護者の負担も減らせる」と話す。

 西田さんは、専門職と連携し、患者の生活全般を見るようにしている。例えば、体が不自由でトイレに行きたがらなかったり、おむつを嫌がったりする人には、ベッド脇にポータブルトイレを置くよう助言する。動いたり、座ったりする時間を増やしてもらうほか、かむ力や食欲が落ちている人には管理栄養士や言語聴覚士らが訪問し、栄養状態なども確認する。

 整腸剤やヨーグルトを日常的にとるのもいいが「下痢になる場合もある。同じ製品を一〜二週間試し、合うようなら続けて」と呼び掛ける。

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