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【暮らし】

外国人の子の発達障害 早期発見に言葉の壁

 日本に住む外国人が急増する中で、乳幼児健診や健康相談を担う保健センターの九割近くで「外国人の子の発達の遅れが、言葉の壁など環境の要因か発達障害なのかの判断が困難」という事例があったことが、国際医療福祉大成田看護学部の森山ますみ准教授(56)らの調査研究で分かった。森山さんは「発達障害がある子を早期に見つけ、支援につなげるのは非常に難しい。発達障害そのものが見逃されている事例は少なくない」と指摘している。 (五十住和樹)

 「ブラジル人の三歳男児の言葉が遅れている気がする」。神奈川県内の保育所から連絡を受けた保健師が対応したが、言葉の習得が遅れているのか、発達障害の可能性が高いのか判断できなかった。結局、保育所を巡回する心理士が男児を見守ることになった。

 森山さんが各地の保健師に行った聞き取りでは、乳幼児健診を知らせる日本語が分からず、健診に来ない親子が少なくない。また通訳が確保しづらい中で、保健師が発達についての情報を十分に聞き取れない。文化や子育て習慣が異なり、言葉の遅れなどの障害に寛容な国の親もある。保健師はスマートフォンの翻訳アプリを駆使するなどして相談を受けているが、「発達の遅れに問題意識を持ってもらえない親もいて、支援につなげられない。外国の子に合わせた療育施設もほとんどなく、支援の継続も難しい」という。

 今回の調査は二〇一五年十月、外国人人口が多い上位百の市区町にある保健センター二百四十一カ所を対象に実施、四十八カ所から回答を得た。全国規模の調査は初めてとみられる。保健師活動の困難性を聞いた質問では、「発達障害かどうかの見極め」が88・9%、「子どもの発達状況の情報収集」が86・7%、「家族が子どもの問題とサービスを理解して意思決定することの支援」が82・2%で、多くの保健師が困難に直面していた。

 森山さんによると、日本人の五歳児健診での軽度発達障害児の割合から、発達障害がある外国人の子は各年齢で二千人前後と推測されるが、実態はほとんど分かっていない。

◆国リハ 多言語パンフ、8月公開へ

ミャンマー語で「お子さんの発達について心配なことはありますか」などと書かれた発達障害支援パンフレット。8月公開予定

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 発達障害児や家族への支援を行う専門機関も対応に苦慮している。国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)にある「発達障害情報・支援センター」が、都道府県や政令市にある発達障害者支援センターなどを対象に昨年初めて行った全国調査では、六割の施設が外国人の子の発達障害に関する相談を受けたと回答。ほぼ半数が、「通訳などの対応や母国語による支援情報の提供は、必要性を感じているが難しい」と答えていた。

 「細かな悩みや、微妙なニュアンスが伝わらない」「地域で孤立している障害児の家族がある」「外国人には現行の福祉サービスは利用しにくい」−。自由記述欄には多くの悩みが書き込まれた。調査を担当した公認心理師の与那城郁子さん(46)は「外国人の子どもの発達障害の診療や支援は、手探り状態で行われているのが現状」と話す。

 これを受け、情報・支援センターは今年三月、障害の解説や相談方法などを書いた多言語による発達障害支援パンフレットの作成を始めた。森山ますみさんらの研究グループはこれを中国語、ポルトガル語、ミャンマー語など計十カ国語に翻訳した。さらに保健師が子どもの発達状況を見るのに使う多言語質問票などと合わせ、八月にインターネットで公開する予定。

 

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