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【暮らし】

<Life around the World>歩行者 守るために

 歩行者が巻き込まれる事故が後を絶たない。交通弱者をどう守るかは各国共通の課題。交差点に最新機器を設けたり、路面電車で車の通行量を調整したり。ある交通手段の導入を巡り、国を挙げて歩行者の安全を議論した国もある。

◆米国 路面電車が足代わり

市民の「足」となっているストリートカー=ワシントンで

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 米国の首都ワシントンの玄関口ユニオン駅から再開発が進む東部の街並みを、赤いストリートカー(路面電車)が自動車に抜かれながらゆっくりと走る。開業は二〇一六年。走行区間はほぼ直線でわずか約三・五キロ。停車駅は全八駅で、運賃は今のところ無料だ。

 「どうだい、快適だろう。買い物やレストランへ行くのに週三、四回は使っているよ」。平日の昼間、乗り合わせた調査会社経営パット・バーンさん(56)が話し掛けてきた。

 市内で車の通行量増加に伴い、交通事故の数が増える中、路面電車は危険を回避したい歩行者の「足」代わりにもなっている。平均時速十キロ未満。開通当初は「全区間歩いても電車より一分遅いだけ」(ワシントン・ポスト紙)とやゆされたが、バーンさんは渋滞や歩行者の事故などを考慮すると「バスより速いし、(歩くより)安全だよ」という。

 九年前に再開発を見越して沿線に引っ越してきた。以前は治安が悪く「無視され、見捨てられていた」(バーンさん)地域は、しゃれたレストランが軒を連ね、あちこちでマンション建設が進む。路面電車は都市開発の象徴なのだ。

 首都交通局によると、市内の路面電車は一九六二年、バスの普及に伴い全廃された。七六年には地下鉄が開通し、六路線に広がったが、公共交通機関による輸送量は市内の人口増に追いつけず、九〇年代後半になると、路面電車は通勤通学など市民の「足」として再び脚光を浴び始めた。

 一方、開発には「無駄遣い」との批判が常に伴い、着工、開通は予定より大幅に遅れた。首都交通局は今、全長六十キロに及ぶ未来路線図を描き、二〇二五年までには現行路線をさらに東に約三〜四キロ延伸させる方針。それまでは無料で運行を続ける計画だが、一直線には進みそうにない。 (ワシントン・岩田仲弘、写真も)

◆中国 信号無視防止 そこまでやる?

上海の横断歩道に設置された人感センサー付きの交通システム=上海市で(浅井正智撮影)

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 上海随一の観光スポット、外灘(バンド)にある横断歩道で、信号が青色に変わるのを待っていると、「ラインを越えています。下がってください」とどこからか声が聞こえてきた。

 横には信号が埋め込まれた高さ3メートルあまりの柱がある。人感センサー内蔵で、信号待ちの人が車道側に出過ぎているのを感知すると自動音声で注意を与える。昨年10月に導入された。

 中国では交通意識は高いとは言えず、弱者保護の発想も乏しい。無信号の横断歩道で車が歩行者のために止まることはまずないし、歩行者の信号無視も見慣れた光景だ。そんな中国だけに、このシステムは場違いなほどまばゆく見える。

 浙江省寧波から来ていた女性(20)は「音声で教えてくれるので親切。信号無視した人の顔を公開し、交通意識を高めようとしているのも素晴らしい」と言う。

 柱には画面もあり、監視カメラが撮った信号無視した人の顔写真と、赤信号で通行した状況が分かる写真が映し出される。ハイテクを使った便利さは、中国では市民管理と表裏一体だ。

 「信号無視を防ぐため、横断歩道に駅のホームドアみたいなものがある」と聞き、興味を引かれてその現場に行ってみると…。

 「春先には撤去された。使われたのは数カ月だけ」と近くの男性店員。歩行者が渡りきる前にドアが閉まってしまい、車道側に取り残される事例が頻発したという。こうなると安全か危険かも分からなくなる。

 「交通マナーは個人の意識の問題。ドアはマナーを強制している」と通行人の女性は憤る。「テストとして設置したが批判もあったので」(区政府の担当者)というのが撤去の理由。いくら管理社会でも、無理やり行く手をはばむやり方は、やはり歓迎されないようだ。 (上海・浅井正智)

◆ドイツ 電動スケーターどこ走る?

自転車専用道を走る自転車。通勤通学の時間帯は混み合うことも=ベルリン市で

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 電動キックスケーターはどこを走るべきなのか−。ドイツで先ごろ、ハイテクの新参者を巡って議論が巻き起こった。

 「音がしないから歩道は絶対に危ない」。ベルリンに住むミシェル・ハーデルさん(20)は歩行者との事故を懸念する。ドイツでは自転車も歩道走行は原則禁止。10歳未満の子どもか、その子どもに同伴する場合に限られる。

 電動スケーターは充電式の小型モーターで駆動するハンドル付きの立ち乗り二輪車。価格は500〜2500ユーロ(約6万〜30万円)で、40キロ以上出る機種もある。既に公道での利用が始まっている国では事故が頻発、フランスは9月から歩道走行が禁止になる。

 ドイツのショイヤー運輸相は当初、歩道走行を認める方針だったが批判が殺到。歩道走行は原則禁止となり、車道か自転車専用道のみと定められた。利用者は14歳以上、最高速度も時速20キロまでに制限され、6月15日から公道利用がスタートする。

 欧州20都市以上で電動スケーターのシェア事業を展開し、ベルリンでも計画するティアー社は独政府の規制について「最も疑う余地がない解決策だ」と評価する。新たな都市の移動手段として注目されるが、自転車利用者の団体は「都市部では広くて段差のない自転車道の整備が早急に必要だ」と自転車道での走行を認めるにはインフラが不十分と反発する。

 子どもを荷台付き自転車に乗せるエレン・ブローニッシュさん(40)は「歩道の一部が自転車道になっているところもある。電動スケーターは車道を走るべきだ」と主張。ゾフィー・ヘルテルさん(28)は「自転車利用者と電動スケーター利用者の間で争いが起きるのでは」と憂慮する。 (ベルリン・近藤晶、写真も)

 

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