東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<子どもを守る>川崎事件から考える(上) 不安な気持ち受け止めて

「子どもの気持ちを書き換えないことが大切」と話す新井陽子さん=東京都内で

写真

 事件・事故、虐待、いじめ…。子どもの安全が脅かされている。子を守るために、大人ができることは何か。川崎市では5月、私立小の児童ら20人が殺傷された事件が起きたばかり。こうした事件が起きた時、被害に遭った子はもちろん、直接被害に遭っていない子にも心のケアは重要だ。被害者支援都民センターの相談員で臨床心理士の新井陽子さんに聞いた。

 −事件から間もない時期に起きることとは。

 現場に居合わせた場合も含め、事件の被害に遭った子どもは一カ月くらいまでの「急性期」には、眠れない、怖い夢を見る、叫んで跳び起きることがあります。現場を目撃した子は、安全な場所を求め、物理的にも心理的にも親から離れられないことがあります。

 −急性期はどのように経過していきますか。

 警報レベル「5」が「4」「3」と下がるように、子どもには少しずつ回復する力があります。そのために「もう安全だよ。怖いものはないよ」「お父さん、お母さんがちゃんと守ってるからね」という声かけが大切です。一カ月以上気になる状態が治まらないときは、児童精神科医の診察を勧めます。

 −長期的影響も心配です。

 事件を見てしまった子どもが繰り返し話しだすことがあります。さえぎったり、「忘れなさい」と言ったりせず、一通り聞いてあげましょう。大人が「それは怖かったね」と言うのではなく、その子が「怖かった」と言ったら「怖かったね」と応じることで、子どもは「受け止めてもらえた」という気持ちになる。大人が子どもの気持ちを書き換えない、子どもが発したものをそのまま受け止めてあげることが大切です。

 −事件に直接関係しない子も不安を感じ、何が起きたのかを尋ねたりします。

 分かる範囲で隠さず説明しましょう。「あそこで大きな事件があったんだよ」などと、あまり生々しく伝えないことです。事件直後の現場映像や、犯行形態をつぶさに再現するようなメディア情報はなるべく見せないように。特に、過去に虐待を受けたり、事故に遭ったりした子は自分のつらかった体験と結びつけてしまい、より強い恐怖を感じることがあります。

 −安全策が講じられていた登校中の事件に、大人として無力感を覚えます。

 「あなたたちは大事な存在なんだよ」「どうすればあなたたちのことを守ることができるのかを、大人はいつも考えているんだ」と伝え続けていきましょう。こんな事件がいつも起きるわけじゃない。今回は特別なこと、安全な日常が戻っているからねということも併せて伝えるべきです。

 −学校も子どものケアを最優先するとしています。

 子どもたちが気持ちを表現する場を設けてほしい。「あなたがどんな気持ちであってもジャッジはしない、そういう気持ちだったんだねと受け止めるよ」と伝えてほしいと思います。 (聞き手・小林由比)

     ◇ 

 二十五日掲載の(下)は、通学路の安全は誰が守るかについて考えます。

<あらい・ようこ> 公益社団法人被害者支援都民センター勤務。公認心理師・臨床心理士。犯罪被害者の支援や東日本大震災復興支援などに携わり、トラウマ(心的外傷)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのセラピーに従事している。

     ◇

子育てサイト「東京すくすく」で詳報が読めます。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報