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【暮らし】

米の等級下げる「着色粒」 規定廃止求める声上がる

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 1等、2等など米の等級付けを定めた農産物検査法の見直しが進んでいる。焦点の一つが、米粒の一部が黒くなったりする「着色粒」の規定だ。健康や味に影響はないが、1等米の基準は、混入をほぼゼロにするよう求めている。見た目を重視するあまり、過剰な農薬散布につながっているとして、一部の農家や消費者からは規定の廃止を求める声が上がっている。 (小林由比)

 着色粒とは、カメムシによる食害の跡が黒く残った「斑点米」などのこと。白米に精米する前の玄米の段階で行われる現行の等級検査では、石などの異物が混じっていないか、形状が整っているかどうかなどの項目とともに、着色粒の混入割合もチェックする。基準は重量で、一等米が0・1%まで、二等米が0・3%までと厳しい。

 農家は、カメムシを防除するネオニコチノイド系といわれる農薬を七月下旬から八月にかけて一〜二回、多発しそうな年はさらに追加して散布するのが一般的だ。農薬散布の背景にあるのが、等級の違いに伴う価格差。全国で米を買い上げるJA全農によると、一等と二等との価格差は六十キロ(一俵)あたり六百円(本年度収穫分からは三百円)になる。しかし、ネオニコチノイド系農薬をめぐっては、日本を含む世界各地に広がるミツバチの大量死の原因とする研究がある。欧州連合(EU)は二〇一八年四月、三種類の同系農薬の屋外使用を禁じると決定している。

 国内でも、環境や人体への影響を懸念し、秋田県内の複数の市町村議会のほか、消費地である東京都の小金井市議会、日弁連も着色粒混入の基準廃止を求める意見書を提出。国会でも五月の衆院農林水産委員会で、この問題が取り上げられた。

 秋田県大潟村で二十年以上、着色粒と農薬使用の問題に取り組む米農家の今野茂樹さん(65)は「不必要な農薬を使わざるを得ない背景に、検査制度があることを広く知ってほしい」と話す。また近年、精米工場に斑点米を除去できる色彩選別機が広く普及していることから、等級検査での着色粒の基準は不要と主張する声もある。

 しかし、農林水産省が今年一〜三月、卸売業者や外食業者など関係者を集めて開いた「農産物規格・検査に関する懇談会」では、「基準を緩和すると農家は農薬を使わなくなり、混入割合が大きくなる」「色彩選別機ですべての着色粒が除去できるわけではない」などの意見が目立った。

 これを受け、同省は三月の中間論点整理で「基準の緩和は難しい」との姿勢を示した。同省の担当者は「健康に影響はなく、味もほとんど変わらないとされているが、少しでも黒い米が混じっているのは嫌だという消費者が一般的。選別機の性能にもまだばらつきがあり、丁寧に除去すれば時間とコストもかかる。取りこぼせばクレームの対象にもなる」と説明する。

 しかし、食の安全などについて情報発信する「食政策センタービジョン21」代表の安田節子さん=横浜市青葉区=は「着色粒が混じった米が消費者に届くことがほとんどなく、存在を知らない人がほとんど。なのに、クレームを理由にするのは矛盾している」と指摘。「わずかに入っていたとしても農薬を使わない方がいいという消費者も多い。ここまで厳しい基準である必要はない」と話す。

 農産物検査法は戦後間もない一九五一年、米の配給制がしかれ、国が米を全量買い上げるための検査を規定するために制定された。今野さんは「見た目のみ重視して、成分検査もほとんど行われていない今の制度は安全性を求める消費者ニーズに逆行している。産地などから見直しを求めるうねりが起きている今、是正すべきだ」と訴えている。

 

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