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【暮らし】

「選択的夫婦別姓」地方から 法制化めざし陳情の輪

「地元から声を上げてほしい」と語る井田奈穂さん

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 夫婦が望めば、結婚後もそれぞれ元の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」の法制化を求め、地方議会に働きかける活動が広がっている。20年以上前に法相の諮問機関が法制化を答申したが、国会での議論が進まず、業を煮やした人たちがツイッターなどでつながった。「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」と銘打ち、声を上げている。 (砂本紅年)

 「家族の形や男女の生き方は多様化し、別姓の選択肢も必要。地元から声を上げてほしい」。全国陳情アクション事務局長の井田奈穂さん(43)は力を込める。

 最近は、改姓で結婚前の実績が引き継げないという女性医師や研究者のほか、改姓の必要が生じるために結婚に踏み切れないカップルの入会が目立つという。

 井田さんは昨夏から、地元の東京・中野区議会への陳情活動に取り組んだ。ツイッターでメンバーを募り、昨年十一月、陳情アクションのサイトを開設。これまでに、中野区を皮切りに、三重県や茨城県つくば市、広島市など、メンバーが陳情した全国十八の地方議会で、国に法制化などを求める意見書が採択された。東京都議会では六月、法制化を求める請願が賛成多数で採択された。

      ◇

 井田さんも結婚に伴う改姓に悩み、選択的夫婦別姓の法制化を強く望む一人だ。

 一九九五年、早稲田大在学中に結婚し、夫の井田姓に変更。出産、就職を経験、三十代後半で離婚した。

 仕事の実績を引き継ぎたいことや、二人の子どもが改姓を望まなかったため、井田姓のままにした。

 二〇一六年、交際していた現在の夫が大きな手術を受けることに。事実婚では手術の同意などの手続きができず、闘病生活を支えるため、再婚を決意した。子どもたちは再婚を喜んだが、改姓は望まず、夫に前夫の姓を名乗らせるわけにもいかない。仕方なく、戸籍の筆頭者だった井田さんが、子どもとの戸籍を抜け、三つ目の姓に変えた。

 パスポートやマイナンバーなどの名義変更手続きのため、何度も有給休暇を取得。クレジットカードは新姓での再発行が必要と言われ、カード決済していた家賃など数十のサービスの名義変更も余儀なくされた。

 仕事に差し障るため、通称で「井田」を使っている。前夫の姓なので、親族から「(夫が)かわいそう」と言われたことも。望まない使い分けを強いられた上、とがめられることに涙が出た。「なぜ自分が自分であることを奪われて生きなければいけないのか」

 国際結婚したカナダ在住の姉は、何の苦労もなく夫婦別姓となり、家族仲も非常にいい。昨年、地元の自民党の国会議員に「日本の法律は初婚しか想定していない」と相談したところ、「まず声を上げて」と助言され、活動を始めるに至ったという。

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 現在、登録しているメンバーは、全国七十七の自治体に住む計約百十人。陳情、請願の提出に向け活動を進めている。詳しくは「陳情アクション」で検索。

◆国会議論進まず 世界で日本だけ

 民法では結婚時、夫または妻のいずれかが姓を変えなければならない。旧姓で検索される学術論文の実績を引き継げないなど、キャリアが分断される弊害も。共働きが増え、晩婚化で独身期間が長くなる中、改姓に伴う不利益に苦しむ人が増えている。

 一九八五年の男女雇用機会均等法の成立などを背景に、九六年には法相の諮問機関「法制審議会」が選択的夫婦別姓を盛り込んだ民法改正案を答申。しかし、自民党の国会議員らが「家族の一体感が損なわれる」などと反対、国会での議論は進んでいない。

 夫婦同姓を法律で義務づけているのは、政府が把握する中で、世界では日本だけ。以前は同姓を義務づけていたトルコやタイなどの国も、すべて法改正した。

 

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