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【暮らし】

<食卓ものがたり>勉強の友に ほっとする味 頭脳パン(金沢市など)

「最新鋭の機械ではない当時、製粉法を編み出すのは大変だったと思う」と話す金沢製粉の寺田匡社長=金沢市内で

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 倉庫には「頭脳粉」と書かれた袋がうずたかく積まれ、出荷を待っていた。これこそが、インパクトのある名前で人気を集める「頭脳パン」の原料だ。「粉にしてから一カ月は寝かさないと、おいしいパンにはなりません」。全国で唯一、頭脳粉を製造、販売する金沢市の「金沢製粉」の寺田匡(ただす)社長(61)は話す。

 頭脳粉は、ビタミンB1を多く含む小麦粉。一九六〇年、同社など全国九つの中小製粉会社が、共同で製粉法を開発した。ビタミンB1が脳の働きを良くするという学説にヒントを得たものだ。ビタミンB1は、小麦粉などに含まれる糖質から、脳の活動に必要なブドウ糖を作るのに欠かせない。

 同じ年、この粉を使って各地のパン店が作り始めたのが、頭脳パンだ。当初は頭脳粉やイースト、干しぶどうといった材料の配合や形などを統一。「知らず知らずに頭のよくなる」などの宣伝文句で発売した。

 第二次世界大戦後、援助物資として米国から小麦粉が提供されたのを機に、パン食が広まりつつあった当時。「頭脳パン」という印象的な名前には、少しでもパンを食べてほしいという願いが込められている。「みんな面白がって食べてくれた。干しぶどう入りも受けた」と寺田さんは話す。

 団塊の世代などが大学受験を迎えた七〇年前後が、頭脳パン売り上げのピーク。その後、消費者の好みが多様化するにつれ、人気は下火に。粉の製造から撤退する業者が増え、金沢製粉だけが残った。今は、石川県を中心に十五の製パン会社やパン店が販売。クリームや小豆入りなど中身も進化している。「勉強中に食べると、ほっとする味。良さを知ってもらいたい」。来年迎える“還暦”を前に、PR方法を思案中だ。

 文・写真 出口有紀

◆味わう

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 寺田社長によると、元祖に最も近い頭脳パン=写真=は石川県加賀市の「くまのベーカリー」のもの。食パンを小さくした形で、ふわふわしながらも食べ応えがある生地と、干しぶどうの優しい甘みが特徴だ。1個160円。3代目社長の深田紀子さん(60)は「先代から引き継ぐ製法で、パンの型も変えていない」と話す。問い合わせは同店=電0761(72)0633=へ。

 さいたま市の「伊藤製パン」はコッペパン状の頭脳パンを、関東の大学生協やスーパーで販売。受験シーズンには合格を祈願する包装になる。1個130円。問い合わせは同社お客様相談室=電048(798)9862=へ。

 

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