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【暮らし】

「在宅」を続けるためには 介護する側も健康管理を

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 自宅で家族を介護する人たちには、介護疲れや自身の体調に不安を覚えてから、要介護者を特別養護老人ホーム(特養)などの施設に入所させるかどうかを悩むケースが少なくない。介護を優先するあまりに自身の健康管理に目がいかない傾向もあり、専門家は在宅介護を続けるためには定期的な健診受診と、あらかじめ施設入所への備えをしておくことが必要と指摘する。 (出口有紀)

 「今、施設に入れるべきかどうか…」。愛知県春日井市の自宅で父(82)を、母(77)と二人で介護する女性(52)は揺れている。

 女性の父は六年ほど前に脳出血で倒れ、寝たきりに近い状態に。言葉が不自由で意思疎通できず、胃ろうで、要介護5だが、施設では十分な介護をしてもらえるか不安で、当初から在宅を続けている。できるだけ口から食べさせたり、作業療法士らによるリハビリを入れたりして、生きる楽しみを見いだしてもらおうと努めていた。

 気持ちが揺らいだのは今春の健診。乳がん検査で引っかかった。精密検査し、異常はなかったが、「もし、自分が倒れたら…」。母には脊柱管狭窄(きょうさく)症などの持病があり、一人で父の世話は難しい。

 とはいえ、施設へ入れる踏ん切りはつかない。現在でも、ショートステイ(短期入所)などの介護サービスを使い休息をとりながら介護を続けられている。

 一応、近くの有料老人ホームや特養へ申し込み、万が一の際は入所の優先順位を上げてもらうようにした。

 二〇一六年の厚生労働省の調査によると、日常生活で悩みやストレスがあると答えた介護者は約七割。主な原因(複数回答)としてその約七割が「家族の病気や介護」を挙げた。一方「自分の病気や介護」を挙げたのは三割ほどだった。

 家族介護者支援に取り組む同市のNPO法人「てとりん」の代表で、看護師の岩月万季代さん(52)によると、医療が進歩し、要介護者が長く生きられるようになる中で、介護に時間を取られ、自分の人生や健康管理が後回しになる介護者は少なくないという。

 てとりんが毎月、開いている家族介護者のつどいに参加した男性(50)は、在宅介護を続けていた母を昨年一月、父を今年三月に同じ特養に預けた。要介護2から3になるころが転機だったといい「ベッド脇のポータブルトイレに行くにも介助が必要になった。夜も眠れずに、しんどくなった」。近くの施設に申し込んだが、父が入所できたのは九カ月後。現在はほぼ毎日、両親の顔を見に行くという。

 岩月さんは「介護者がいきなり倒れ、急に在宅介護の限度がくる時もある。介護者自身も健診は欠かさず受け、健康維持に努めることが在宅介護を続ける絶対条件」と指摘。また、万が一のときにいつでも施設に預けられるような準備として「介護者が通いやすい適当な施設をあらかじめ探し、申し込んでおくのも手。施設に頻繁に通い、顔を見せることも十分な介護」と力を込める。

 日本福祉大中央福祉専門学校(名古屋市)専任教員で、介護の問題に詳しい渡辺哲雄さん(68)は、施設入所のタイミングは、本人の状態、家族の介護力などで変わると指摘。「本人の気持ちを聞きながら、一緒に考えてほしい。本人に合った施設を探すためにも、ケアマネジャーなど、各地域の施設の実情をよく知っている人に相談してみるのも大事」と話す。

 

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