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【暮らし】

<Life around the World>夏にいただきます!

 曇りや雨の日ばかりでうっとうしいが、まもなく夏本番。休息や睡眠も大事だが、しっかり食べて夏を乗り切りたい。エネルギーを補充したり、火照った体を冷やしたり。世界の人たちは何を食べているのだろう。

◆中国 ザリガニ愛 止まらない

グロテスクだが、味が濃いこともあり泥臭さは感じない

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 日本では厄介者のアメリカザリガニだが、中国では夏を代表する味覚だ。

 行列が絶えないザリガニ専門店「胡大飯館」の郭冬(かくとう)総経理(33)は「最盛期には北京の四店舗で一日十万匹売れる」と豪語する。

 味はカニとエビの中間。さんしょうと唐辛子を利かせたピリ辛「麻辣」、ニンニク、中華調味料「豆鼓」の三種類の味付けが、度数が低くさっぱりした中国ビールにピッタリ合う。

 ザリガニは中国で「小型イセエビ」と訳されたため「高級食材」との印象も重なり、ザリガニ店が全国で一万七千店舗を超え、マクドナルドより多いという人気ぶり。高級ホテルでのザリガニビュッフェもあるという。

ビニールの使い捨て手袋を使うためスマホは触れず、会話も弾む=いずれも北京市で

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 客層は四十代以下のカップルや友達同士など二、三人で来店。大きさによって一匹五〜十五元(一元=十六円)のザリガニを一人二十匹以上は食べるという。男女二人ずつの大学生四人組は「食べ始めてスマホを一度もいじってない。会話が弾んで楽しいよ」とにっこり。味以上に別の効果もあるようだ。

 ほとんどが養殖で、春に産卵して二カ月ほど水田で成長する。出荷の最盛期は六〜八月で、サイズも大きくタンパク質が豊富な身やミソの味もいいという。

 二〇一七年の養殖ザリガニ生産量は、十年前の四倍強の百十三万トンで右肩上がりの急成長。関連産業も含めた総生産額は三千億元に上り、湖北省の短大にはザリガニ学部までつくられた。湖北、安徽、湖南、江蘇、江西の五省で全国の生産量の96%以上を占め、農村地域の所得を向上させたい当局の思惑もブームの背景にある。さらに廃棄される殻から多糖類のキチンを抽出し、医薬・健康食品などの原料としても使われる。

 この外来種の伝来には諸説あるが、食用ウシガエルの餌として米国から日本へ輸入されたザリガニを、一九三〇年代に日本人が持ち込んだ(江蘇省淡水水産研究所)説が有力のようだ。 (北京・安藤淳、写真も)

◆韓国 美ピンス 器も「いいね」

韓国の伝統容器に盛られたマチムネカフェのかき氷=いずれもソウル市で

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 「きれい!」。かき氷が運ばれると、ほぼ全員がスマホで撮影を始める。若者に人気の街、ソウルの弘大(ホンデ)エリアにある「マチムネカフェ」。人気メニューは、韓国の宮中料理で使われる真ちゅう製の容器に盛られたかき氷だ。

 韓国語でかき氷はピンス。果物をふんだんに載せたり、ふわふわに削ったミルク氷を使ったりするピンスは「インスタ映え」もありここ数年、日本に専門店が進出するほどの人気を集める。

 長年、ホテルなどで料理人を務めた李振雨(イジヌ)さん(54)は開業に当たり「カフェに必須」のピンスをどう作るか悩んだ。たどり着いたのが中央の筒に炭火を置いて料理を温める伝統容器。アーモンドやきな粉を潜ませたミルク氷を果物で覆い、炭の代わりにドライアイスを入れてスモークを出す。「外国の方には韓国の伝統料理も知ってもらえます」

東氷庫で人気のロイヤルミルクティーピンス(左)とミスカルピンス

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 ソウルのピンス専門店の先駆けといえるのが2010年オープンの「東氷庫(トンビンゴ)」。社長の朴東浩(パクトンホ)さん(58)は「当時は一年中、ピンスを出す店はなかった」と振り返る。細かく削った氷に国産小豆などを載せたミスカルピンス、当時はまだ珍しかったロイヤルミルクティーピンスが地元民に愛され続け、売り上げの半分を配達とテークアウトが占める。

太極堂の昔ながらのかき氷

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 最近は、粗く削った氷の上に小豆やゼリー、缶詰の黄桃、コーンフレークなどを載せる昔ながらのピンスも注目を集める。1946年から続くパン店「太極堂(テグクタン)」では80年代から変わらないピンスを5〜9月に提供。金善龍(キムソニョン)課長(33)によると「高齢者にとっては懐かしい味、SNSで見て来る若者には新しい味」。氷が粗いため「食べるとすぐに涼しくなる」のも人気の理由の一つという。 (ソウル・境田未緒、写真も)

◆ロシア 冷製スープに思い熱く

細かく刻んだ野菜や肉にクワスを注いでつくる=モスクワ市内で

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 食欲の落ちる夏、冷たい食べ物がありがたいのはロシアも同じ。火を使わない料理は、夏の台所を預かる人たちにもありがたい。両方かなうのが、ライ麦由来の微炭酸飲料「クワス」を注いだ冷製スープ「オクローシカ」だ。

 「作り方はシンプル。注文から十分あれば、テーブルまで届けられる」。モスクワ中心部のロシア料理店「マトリョーシカ」のウラジスラフ・ピスクノフ料理長(49)は言う。

 調理場をのぞかせてもらうと、確かにその通り。サワークリームとマスタードを皿に敷き、細かく刻んだキュウリやネギ、ラディッシュとゆで卵、肉を、その上に盛る。褐色のクワスで浸すと、五分で完成した。

 ピスクノフさんによると、ポイントは刻んだ食材を五〜一〇度に冷やしておくこと、食欲をそそる酸味の効いたクワスを使うこと。味見させてもらうと、シャキシャキした食感の野菜が酸味、辛味と混じり合い、心地良くのどを通った。

ロシアの夏の定番スープ「オクローシカ」

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 スープの味を決めるクワスは、ロシアの夏の定番だ。どこのスーパーにもペットボトルがあるが、伝統の製法を求めてモスクワ郊外、六百年以上の歴史を持つサビノ・ストロジェフスキー修道院を訪れた。

 タンクに黒パンとドライフルーツを投じ、蜂蜜、麦芽、酵母を加え、井戸水で満たす。添加物は一切使わず、冷蔵庫で二週間寝かせれば完成。修道院の販売担当、ラリ・コチラマザシビリさん(53)は「夏の暑い時季ならば、一日五百リットル売れることもある」と話す。

 ロシア料理研究家のパベル・シュトキンさん(54)によると、クワスに含まれるアルコール分は傷みやすい夏の食材の消毒に役立つ。「簡単で安くて、健康にいい。それが食べられてきた理由」というオクローシカ。外国人にとってはややクセのある料理も、生活の知恵の風味だ。 (モスクワ・栗田晃、写真も)

サビノ・ストロジェフスキー修道院前のクワス売り場=モスクワ郊外で

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