東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 7月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

ハンディある人 投票に壁 家族、ヘルパーの代筆は不可

「何で憲法で定められている『投票の秘密』が、法律でひっくり返されるのか」。ヘルパーによる代筆が認められず、投票できなかった中田さん=大阪府豊中市役所で

写真

 投票率が五割を切り、過去二番目に低かった二十一日の参院選。棄権者が相次ぐ一方、体の障害や認知症などで自分で投票用紙に記入できず、投票したくてもできなかった人たちがいる。参院選では、ほとんど体を動かすことができない重度の障害者も当選。国会の受け入れ態勢の検討が進む中、当事者たちの一票を可能な限りくみ取る仕組みが求められる。 (三浦耕喜)

 「憲法と法律と、どっちが上なのか」

 先天性の脳性まひで自筆が困難な大阪府豊中市の中田泰博さん(47)は憤る。中田さんは期日前投票に行ったが、ヘルパーによる代筆が認められず、参院選では前回二〇一六年に続き、再び、投票を断念した。

 公職選挙法では、身体障害などで投票用紙への自筆が困難な人のために、代筆で投票する制度を定める。ただ、過去に相次いだなりすましなどの不正を防ぐため、一三年の公選法改正で代筆を選挙管理委員会の職員に限定。家族やヘルパーは代筆できなくなった。

 代筆投票では投票先を代筆者に明かすことになるため、中田さんは、信頼するヘルパーや知人の代筆を希望。だが、一六年の参院選で公選法を理由に選管に拒まれた。

 憲法では「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」と定める。中田さんは選管職員に代筆者を限定している公選法を「『投票の秘密』を保障した憲法に反する」と一七年三月に提訴した。現在、大阪地裁で係争中だ。「投票先は政治において最大のプライバシー。信頼できる人にだけ明かせるようにするべきだ」と話す。

 「投票の秘密」が、投票の妨げになりかねないケースもある。名古屋市の会社員男性(49)の母(83)は認知症だが、男性ら身近な人にならば、うなずくことなどで「はい/いいえ」の意思表示はできる。入院先の他県の病院は院内で不在者投票ができる「指定施設」になっており、母が投票の意思を示したため、代筆をする選管職員が投票のために来院。ただ、投票の秘密や不正防止などのために、男性は病室の外で待たされた。母は選管職員と意思疎通ができずに、結果的に投票に至らなかった。

 名古屋市中川区の佐藤奈美さん(55)の母克江さん(79)も認知症で自筆が難しく、前回の参院選では代筆投票を利用。家族が付き添えないために投票所で一時動揺したことがある。それでも当時は投票できたが、認知症が進み、会話もかみあわなくなり、今回の参院選では投票を断念した。

 佐藤さんは「本人が安心して投票できる環境づくりをしてほしい」と話す。

 現場の努力で、投票環境の改善を図るケースもある。全身の筋肉が動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を患い、体がほぼ動かないサッカーJ2のFC岐阜元社長の恩田聖敬さん(41)は近年の選挙は代筆投票を利用。選管職員が候補者名などが書かれた紙を指さし、恩田さんがうなずく方法をとっている。

 一六年の参院選では投票所のレイアウトの関係で、恩田さんが利用するリクライニング型の車いすが収まるスペースがなく、人の行き交う投票所の真ん中で実施。「のぞかれないか、ひやひやだった」という。

 今回は投票所に着くと、前回と同じ選管職員がすぐ、部屋の端のスペースの投票台へ誘導。説明する声も周囲に聞こえないよう極力小さく、恩田さんは「ALSは聴力には影響しないことも理解した配慮だと感じた」と話す。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報