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【暮らし】

<「親亡き後」の前に 苦悩する障害者の家族> (下)広がる有志の相談窓口 人とつながり不安解消

FPの鈴木伸行さん(左)に、子どもの今後について相談する恒矢景子さん(中)と夫の保雄さん=津市で

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 自分たちが面倒を見られなくなったら−。障害のある子どもを持つ親の不安の一つが、お金だ。ファイナンシャルプランナー(FP)の鈴木伸行さん(65)が昨年十一月、津市の事務所内に設けた「みえ障害者の『親なきあと』FP相談室」には、子どもの幸せを願い、多くの親が訪れる。

 三重県四日市市の恒矢保雄さん(64)と妻景子さん(61)が、初めて足を運んだのは四月。三男信輝さん(25)はダウン症と自閉症だ。こだわりが強く、会話もできないが、二年ほど前から自閉症の友人と二人で暮らす。アパートは家から車で十分ほど。ヘルパーや民生委員、地域の人らに支えられながら、平日は作業所に通い、帰宅後は趣味のピアノに没頭する。今のような暮らしを続けられるようにするのが、夫婦の願いだ。

 鈴木さんは、毎月の収支を具体的につかむよう勧めている。例えば、信輝さんの場合、収入は障害基礎年金や障害者関連の手当、作業所の工賃。家賃や趣味のための費用などが支出だ。計算すれば、毎月、赤字がいくら出るかが分かる。その上で、親が体力的にも、金銭的にも子の面倒を見切れなくなる年齢を七十歳、子どもが九十歳まで生きると仮定。赤字額の合計を出せば、七十歳までに用意すべき金額が分かり、「とらえどころのない不安からは解放される」と話す。

 今は経済的に援助し、信輝さんの年金や手当をためているため、将来、お金が不足することはなさそう。だが、心配なのは「多額のお金を一度に渡すと詐欺などに遭わないか」。鈴木さんは、一定の額が、定期的に子どもに渡るよう信託契約を提案した。「財産に関わることは、親同士でも話しにくい」と景子さん。一方、行政の相談窓口は福祉サービスの問題が主だ。「解決の糸口が分からないうちに年を取る。『親ある間』に始めないと」

 鈴木さんは弁護士や社会保険労務士らさまざまな専門職と連携。資産管理以外の相談にも対応している。津市のNPO法人「成年後見支援センターれんげ」理事長の横山秀樹さん(66)も、協力者の一人だ。

 れんげは、津市と三重県大紀町にある障害者入所施設の家族会有志が二〇一四年に設立。今は法人として両施設の利用者四人の後見を担う。成年後見人の任務は、本人の財産管理と身上監護の二つだ。身上監護とは施設や病院に入る手続き、療養やサービスを受ける手配など。後見人には弁護士ら専門職が選ばれることもあるが、重度の自閉症の長男(37)がいる横山さんは「障害の特性を理解していないと、その人に合うサービスが受けられるかは難しい」と活動の意義を話す。

 鈴木さんが開いているような相談室の先駆けは、知的障害のある娘を持つ東京都世田谷区の行政書士、社会保険労務士の渡部伸さん(58)だ。初めて相談室を設けたのは五年前。渡部さんの趣旨に賛同した人たちによって、全国五十五カ所に広がった。「気軽に来られるように」と、渡部さんは可能な限り相談料を無料にするよう求めている。

 「相談に来て話をする中で、何が心配なのか、解消する手だては何かが分かってくる」と渡部さんは指摘。不安の「見える化」だ。多くの親と向き合ってきて感じるのは「孤立せず、さまざまな人とつながる大切さ」。親の会に入ったり近所付き合いをしたりすれば、役に立つ情報が入ってくることも少なくない。「既存の制度だけでは思い通りにできないこともある。そんな時、誰かとつながっていれば、『何とかなる』って思える」 (出口有紀)

 

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