東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 8月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<Life around the World>怪奇 怖い?あこがれ?

 死者の魂が戻ってくる夏。怪談話で涼むのも、この季節ならではだ。お化けや幽霊への飽くなき好奇心は海外も同じ。伝統や信仰心に根差したものや、未知の世界へのあこがれを投影したものも。恋愛成就の「カミ」に祭り上げられたお化けもいる。

◆タイ 恋愛成就、悪霊に願う

ナーク像に手を合わせる参拝者。寺院のお堂には肖像画やドレスも飾られる

写真

 タイで語り継がれるのは「ナーク」と呼ばれる女性の幽霊だ。およそ百五十年前、夫のマークと駆け落ちして結ばれたナークだが、幸せもつかの間、夫は身重の妻を残し、徴兵される。ナークは難産の末、母子ともに死んでしまう。

 ナークは幽霊となって戦地から戻った夫のもとに現れ、生活をともにする。自分の秘密を知る隣人たちを次々に呪い殺し、妻が幽霊だと気付いた夫は寺に逃げ込む。悪霊化したナークは僧侶によって退治される、という怪談だ。

 しかし、幽霊になってまで夫を思い続ける純愛物語としてタイ人たちの心をつかみ、何度も映画やテレビのドラマ、ミュージカルになっている。地元メディアによると、一九九九年公開の映画「ナーク夫人」は当時、同国史上初めて一億五千万バーツ(約五億一千万円)の興行収入をあげる大ヒット作になった。

近くには「タンブン」のために小動物を売る店が並ぶ=いずれもバンコクの寺院「ワット・マハーブット」で

写真

 首都バンコクのオンヌット地区にある寺院「ワット・マハーブット」はナークがまつられ、今や恋愛運アップの人気スポットだ。ナーク像を置き、寄贈された肖像画や女性用のドレスなどを飾るお堂には、参拝者の人波が絶えない。二十バーツ(約七十円)のお布施をしてから、線香を手向け、金箔(きんぱく)を像に貼っていく。

 「すてきな恋人が見つかりますように」と願掛けしたのは、七月中旬に初めて訪れた独身女性のビラヤーさん(29)。そして「怖いと思ったことはありません。彼女を信じていますから」と付け加えた。

 お堂の近くを川が流れ、魚やカメ、小鳥などの小動物を売る店が並ぶ。タンブン(タイ語で功徳を積むという意味)のために参拝者は小動物を買い取り、川に逃がしてやるそうだ。二十年近く店番をしている女性のトンさん(49)は「きっと良いことがありますよ」と笑顔で話した。 (バンコク・山上隆之、写真も)

◆米国 ビッグフット、夢広がる一歩

「ビッグフットに注意」の標識=コロラド州コロラドスプリングズで(タイラー・セカンディ氏提供)

写真

 ビッグフットは、米国で最も人気がある謎の未確認生物といっていいだろう。米メディアによると、身長は約2.4メートル、体重は約360キログラム。足の大きさはその名の通り40〜50センチメートルあるといい、人間と同じく二本足で歩く。毛深い類人猿タイプで、映画「スター・ウォーズ」シリーズの「チューバッカ」のイメージに近い。特に西部の森林で目撃情報が相次ぎ、学術的な調査も進んでいる。

 今年6月には、米連邦捜査局(FBI)が衝撃的な22ページにわたるビッグフットに関する捜査報告書を公開した。1976年11月、ある著名なビッグフット研究者が以前に目撃証言のあった現場からめずらしい毛髪を採取し、FBIに鑑定を依頼したところ、実際に科学的な鑑定を実施していたことが分かったのだ。翌77年2月、FBIが出した鑑定結果は残念ながら「シカ類の毛」だった。

石こうの足型を手にするアイダホ州立大のジェフリー・メルドラム教授

写真

 だが、ビッグフットの存在を信じる人たちにとってそれは一つの結果にすぎない。「ビッグフットがなぜ実在するか。それは足跡という説得力のある証拠があるからだ」。この分野の第一人者といわれるアイダホ州立大のジェフリー・メルドラム教授(人類学)は強調する。

 メルドラム氏はこれまで300以上の足跡から石こうの足型を作製しては分析。その結果、人類がまだ確認していない二足歩行の人間に似た動物が実在すると確信している。

1967年に米カリフォルニア州で撮影されたという有名な映像=いずれも同教授提供

写真

 「マウンテンゴリラが発見されて衝撃が広がったのはまだ20世紀初頭の話。人類により近い新たな霊長目の発見は、チンパンジーやゴリラの発見よりもインパクトが大きい。それは環境保護がいかに重要かということもわれわれに教えてくれるだろう」。ビッグフットファンの夢は広がる。 (ワシントン・岩田仲弘)

◆英国 古城さまよう王妃の亡霊

ヘンリー8世への命乞いのため、キャサリン・ハワードが走ったとされるハンプトンコート宮殿の廊下

写真

 パブでは灰皿が勝手に動きだし、古城では飢え死にした女性がさまよう−。英国では至る所に、幽霊にまつわる物語がある。背景には長い伝統に加え、古代信仰の影響もあるようだ。

 「気味の悪い英国」。英政府観光庁のウェブサイトは幽霊が目撃された場所などの地図を掲載。幽霊が出るとされるホテルまで紹介し、「泊まるのに十分な勇気はありますか?」と問い掛ける。幽霊は英国観光に一役買っている。

 世界的な知名度を誇るのは、十六世紀前半の国王ヘンリー八世の妻の幽霊だ。国王は跡継ぎの男児誕生にこだわり、生涯で六人の妻をもった。二人目のアン・ブーリンは反逆の容疑などをかけられ、ロンドン塔で斬首刑に。この塔では、頭部を抱えて歩くブーリンの幽霊が出たとされる。

 国王は塔から約二十五キロ離れたハンプトンコート宮殿で暮らしたが、ここでは五人目の妻で、姦通(かんつう)罪で処刑されたキャサリン・ハワードの幽霊が。処刑前、国王に命乞いするためにハワードが走った廊下では来場者が寒けを感じたり、白い服を着てうろつく女性が目撃されたりする。

ロンドン郊外のイースト・モールジーに立つ同宮殿。正面入り口ではドラゴン像が迎える

写真

 「この廊下では突然気を失う人がいるが、全員が若い女性だ」と宮殿の案内人デービッド・パッカーさん。英国の幽霊に関して「それぞれの物語が各土地の文化に根差している。それに英国人は刺激を求めるから幽霊が好きだね」と笑う。

 多様な幽霊の背景には、紀元前の古代に欧州大陸から渡ってきたとされるケルト人の存在が指摘される。

 マンチェスター・メトロポリタン大のケン・ドリンクウォーター上級講師(超心理学)は「ケルト人にはすべての生命は霊魂を宿し、霊魂とは意思疎通できるという信仰があった。つまり、生と死が近接していた」と解説。ケルト人の信仰を源流に過去の出来事に興味が強い国民性も重なって、英国の幽霊たちは生まれたのかもしれない。 (ロンドン・藤沢有哉、写真も)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報