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【暮らし】

歯のかみ合わせ 回復を 認知症 進行遅らせる可能性

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 義歯(入れ歯)を調整して、かみ合わせを回復、維持することで認知症の進行を遅らせる可能性がある−。歯科医師の資格も持つ認知症専門医の松本一生(いっしょう)さん(62)が、自分のクリニックの患者データを分析したところ、こんな結果が出た。「施設でも在宅でも、認知症の人の支援には歯科の参加が不可欠」と訴える。 (五十住和樹)

 松本さんは大阪市の「松本診療所(ものわすれクリニック)」で、訪問診療をする歯科医院と連携、往診も含めた認知症の診療をしている。

 19年前に来院した当時65歳の女性は糖尿病と脳血管性認知症。口の違和感を訴えていたが、総入れ歯の装着を拒み続けた。ただ昨年、昼夜逆転を起こすなど認知症が進行、要介護4の判定で特別養護老人ホームに入った。松本さんは「かみ合わせの回復をあきらめ、認知症が急速に進んだ例だ」と話す。

 一方、21年前に初診だった当時69歳の女性は「痛い」と部分入れ歯を使わなかった。しかしアルツハイマー型認知症が進むと痛みが鎮まり、9年前から義歯を装着。その後、一昨年に亡くなるまで寝たきりにならず、食事も楽しみ、認知症はほとんど進まなかったという。

 こんな事例を多く見てきた松本さん。1992年8月から2018年7月までにクリニックを受診した人のうち、義歯やインプラントも含めて歯がかみ合う本数が上下で11本以上20本以下の50人と、10本以下の50人に分け、認知症の進行度合いを2年間追跡した=図。

 認知症の診断に広く使われる「長谷川式認知症スケール」で、この間の平均点数の推移を調べた。11本以上のグループは軽度にとどまったのに対し、10本以下のグループは重度にまでなった。

 埼玉県川口市で訪問診療も行う歯科医師で、有床義歯学会会長の亀田行雄さん(56)も、かみ合わせの回復で認知症の進行を遅らせたとみられる症例を紹介してくれた。

 歯周病で全ての歯を失い、歯茎で食事、言葉数も少なくなっていた認知症の女性(85)は4年前に来院。義歯を作り、少しずつ慣らしていくと笑顔が復活。今は家族と同じものを食べ、車いすで定期健診に来るまでになった。

 「介護現場では、入れ歯が合わないから食事ではいつも外すという事例が少なくない」と松本さん。「認知症の初期の段階で、かみ合わせを調整して食事を取れるようにするのが重要だと思う」と話している。

◆義歯使わないと発症リスク1.9倍

 神奈川歯科大の山本龍生准教授(当時)らが2012年に発表した研究結果では、愛知県に住む4425人の高齢者を4年間追跡したところ、歯がほとんどないのに義歯を使わない人は、20本以上歯が残っている人の1.9倍、認知症になるリスクが高かった。義歯を使わず、かめなくなることで、栄養が偏ったり、そしゃく機能が衰えたりして、脳の認知機能が低下した可能性があるという。

 この研究では、歯がほとんどなくても義歯を入れることで、認知症になるリスクを4割抑制できる可能性も明らかになった。

 

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