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【暮らし】

「名もなき家事」見える化 名前付け 夫婦で負担共有

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 共働き夫婦が増える中、家事や育児を分担することは日常生活を上手に回す上で重要だ。ただ「皿洗い」一つをとっても、食器を洗うだけでは成り立たない。「洗う前に水に浸す」「乾いたら元の場所に戻す」など、はっきり名前が付けられない「名もなき家事」の積み重ねが必要だ。こうした作業一つ一つに名前を付け、家事に関わる負担を「見える化」する試みが始まっている。 (出口有紀)

 「食器を片付けるところまでやっておかないと駄目だったのか」。東京を拠点に活動するコピーライター梅田悟司さん(40)は、水切りかごにある皿の山を見てため息が出た。長男が生まれ、四カ月半の育休を取った二〇一六年のことだ。前の晩にやったのは、食器を洗うところまで。朝食を作ろうとしてキッチンに入った途端、気分がなえた。

 育休中、掃除、洗濯といった一般的な名詞ではくくれない「名もなき家事」が多いことに驚いた。それまでも家事はしていたつもりだったが「妻が気づいた部分をやってくれていたから家庭が回っていた。もっと敬意を払うべきだった」。

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 梅田さんが、一日に行う「名もなき家事」を書き出していくと百二十にも。その中から、多くの人に共通する七十を選び、名前を付けた。少しでも楽しく取り組めるようにと、ユーモアあふれる命名を心掛けたという。成果は十七日発売の著書「やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。」(写真、サンマーク出版)で紹介している。

 例えば、洗った食器を元の場所に戻す家事は「リ・ポジショニング」。多種多様な食品保存容器(タッパー)の容器とふたを合わせる「タッパー神経衰弱」、宅配便の再配達の時間に間に合うように帰る「再配達門限」という具合だ。「名もなき家事」の中には一緒に暮らすからこその心の動きも含まれる。家族がやってくれた家事の詰めの甘さが気になって指摘したところ、相手のやる気をそいだ経験は多くの人に覚えがあるだろう。梅田さんは、これを「うらはらな感謝」と名付けた。梅田さんは「夫婦で前向きに分担を考えたり、不要な家事を洗い出したりするきっかけになれば」と力を込める。

 「名もなき家事」の考え方が生まれたのは三年前。大和ハウス工業(大阪市)の住宅事業推進部課長、多田綾子さん(48)が提唱した。共働きの家族が暮らしやすい家を提案、販売するに当たり、家事の定義について考えたのがきっかけだ。

 同社は一七年、子持ちの共働き夫婦六百人に調査を実施。どこの家庭でもやっている家の仕事三十項目を挙げ、「家事だと思うか」を尋ねた。その結果、妻が家事と認識している割合が高かったのは十八項目に。例えば「トイレットペーパーがなくなった時に買いに行く」では、83%の妻が家事だと答えたのに対し、夫は67・3%。「町内やマンションの会合に出席する」は妻が56・7%に対し、夫は46・7%。加えて、誰かがやらないといけない「名もなき家事」を負担する人は妻が約九割を占めた。

 「夫が家事とは思っていない作業は無限にあり、それを担う妻は不満が募る。このモヤモヤを可視化したかった」と多田さん。自身も以前は家事を一手に引き受けていたが、最近は夫も変化。ティッシュの箱が空になると「名もなき家事が発生した」と片付けるように。「洗濯も天気を見るところから段取りをする。夫のやり方の方が優れている場合もある」と話す。

 内閣府によると、共働き世帯が専業主婦のいる世帯を上回ったのは一九九七年。その差は昨年、二倍以上になった。夫婦そろって気持ちよく仕事と家庭を両立するには、「名もなき家事」を含めた全ての家事を共有することが大事だ。

 

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