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【暮らし】

<どうする相続>「負動産」親は生前対策を 管理、税金…子世代の負担に

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 相続した実家や農地を処分したいのに、買い手がつかず困っている人は少なくない。所有しているだけでも、税金や管理の手間などでお金がかかる。こうしたマイナスの不動産は「負動産(ふどうさん)」とも呼ばれ、相続をきっかけに問題が表面化しやすい。子世代が困らないためにも、親は早めに対策を立てたい。 (砂本紅年)

 「こんなことになるなら、もっと勉強しておけばよかったと後悔しています」。長野県の女性(80)からこんな投稿が寄せられた。めい二人が相続した不動産の管理で困っているという。

 近くに住んでいた女性の妹は十数年前に脳血管障害で倒れ、約七年前に亡くなった。妹の家族は四十代の娘二人。いずれも結婚し東京で暮らしており、妹が亡くなるまで介護は女性が担った。納骨時、妹名義の家屋付き宅地と農地約四千平方メートルについてめいを交えて相談。司法書士の「娘二人の共有名義に」という助言に従い、よく分からないまま、手続きしたという。

 固定資産税は、共有名義の代表者である年上のめいの銀行口座から引き落とされている。だが、空き家や農地が雑草などで荒れると、近所から女性に苦情が来る。市の農業委員会からも「農地をどうするのか」と問い合わせを受けた。

 本来、管理するのは所有者のめい。だが、電話をしても出ず、連絡が取れないままで、何も決められない。やむを得ず、女性が年二〜三回、草刈りをしている。名義を安易に地元にいない相続人にしたため、心配事が増えた。「所有者でないのに何か言われるのは私。介護が大変で、相続のことまで頭が回らなかった」

 放置されている不動産は全国で増え続けている。総務省の調査によると、空き家数は二〇一八年、地方を中心に約八百四十六万戸に上った。農林水産省の調査では、高齢化や農家の減少で耕作放棄された荒廃農地も一七年、約二十八万三千ヘクタールにわたる。農協に勤務経験のある税理士清田幸弘さん(57)=東京=は「いらない不動産は、家族や親戚で押し付け合いになる。親の生前対策が大切」と話す。

 清田さんによると、対策はこんな手順で進めるといい。まず、どんな財産があるか洗い出し、相続税を試算する。不動産は財産価値の有無を踏まえ、誰に継がせるか決める。後継者、相続したい人がいない農地などは売却するか、耕作する意思のある農家に、無償で土地を譲る「遺贈」するなどの遺言を準備。財産全体で負債が多い場合は、相続放棄も検討する。

 親世代が土地に思い入れが強い場合、家族間の話し合いが特に大事になる。愛知県の五十代女性が本紙に寄せた投稿によると、女性の父親は、自由に建物を建てられない市街化調整区域の中に畑を所有。女性が相続する予定だが「父から『先祖から受け継いだ土地。手放すつもりはない。この家に生まれたからにはあきらめて畑を管理しろ』と言われ困っている」という。

 実は清田さんの父も、市街化調整区域内に農地を所有。買い手が見つからず、今は畑として無料で貸している。草刈りの委託料で年約十万円、固定資産税で年一万円弱と出費だけがかさむ「負動産」でもある。

 三人兄弟で話し合い、長男の清田さんが相続する予定。とはいえ、売却先があれば、必ずしも継ぐ必要はないと考えている。

 清田さんは、相続する不動産に農地がある場合は「周りの農家で買いたい人、借りたい人を探すため、まず農業委員会に相談を」と助言。親世代には「先祖の思いだけでなく、子世代にも目を向け、負担を残さない対策の検討を」と呼び掛けている。

◆困り事や体験談募集

 相続に関する困り事や体験談を募集します。メールseikatut@tokyo-np.co.jp、ファクス03(3595)6931。件名に「どうする相続」と記入を。

 

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