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【暮らし】

<考えようPTA インタビュー編> (上)実は“母の会”戦前組織“大日本連合婦人会”の塗り替え

◆歴史的背景論じる 岩竹美加子さん

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 PTAを巡る問題を考える時、「戦前の学校にあった組織との連続性に着目する必要がある」と指摘する研究者がいる。フィンランド在住で、PTAの歴史的背景を論じた「PTAという国家装置」(青弓社)の著書がある岩竹美加子さん(63)=ヘルシンキ大非常勤教授。PTA改革に必要な視点を聞いた。 (小林由比)

 −PTAは戦後に広がった組織。教育の民主化の果実ではないのか。

 占領期に連合国軍総司令部(GHQ)が主導した組織だと思っている人が多いが、それは「PTA(父母と先生の会)」という名前だけのこと。むしろ、一九二〇年代から当時の文部省が家庭教育振興のため、各小学校に設置を目指した「母の会」や、三〇年に同省が創設した「大日本連合婦人会(連婦)」との連続性に着目すべきだ。戦後、PTAを組織化できた背景に、戦前に設けられた母の会などの存在があり、「看板の塗り替え」だったことは日本PTA全国協議会も認めている。

 −今のPTAに何が引き継がれているのか。

 母の会も連婦も「母親の奉仕と修養」を名目に、女性を国家総動員体制に組み込むことを狙った団体。町内会に結び付けられ、言われたことに従わせられたり、学校の「下働き」をさせられたり、自分たちに決定権がない今のPTAにつながる。「強制加入」問題や、「あの人は楽をしてずるい」などと足を引っ張り合うPTAの悪弊には歴史的な経緯がある。

 −各地でPTA改革の動きが出てきている。

 PTAは任意の市民組織なので、行政や国の介入は許されない。よって行政や地域の「下請け仕事」をする必要はない。「共働きが増えて大変。業務を簡略化しよう」では小手先で根本解決にならない。

 −フィンランドにPTAのような組織は。

 「親達の組織」という保護者組織がある。学習環境の向上のため行政に要求したり、先生と話し合ったりする。やりたいと考える親が集まるだけで加入率は10%程度。すべての学校にあるわけでもない。独立組織で、上部組織や行政の口出しはあり得ない。

 −学校と向き合う親の団体は必要。PTAではダメか。

 行政の言いなりでなく、ものを言える組織が必要。学校で起きている課題に対して意見を伝えたり、親が感じる問題を話し合ったりできる団体であればいい。その場合、学校単位の団体で十分。地域や全国の上部組織などはいらない。

 −改革のうねりを進めていくためには。

 解決へ声を上げている全国の人たちがネットワークをつくって取り組むのはその一つだ。「子どもを学校に通わせる親が抱える問題」を社会問題として可視化すべきだ。百年近く前から続く根が深い問題。今ある枠組みの中での改革では結局、延命や現状維持になってしまう、ぐらいの危機感で議論することが必要だ。

 ◇ 

 PTAを巡る議論が活発になっている。さまざまな角度で提言する「論者」のインタビューを三回に分けて伝える。

<いわたけ・みかこ> 東京都生まれ。息子の小学校でPTA非加入を許されなかった体験などが、PTA問題を論じるきっかけに。ヘルシンキ大教授などを経て現職。著書に「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」など。

 

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