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【暮らし】

<考えようPTA インタビュー編>(中) 改革積み重ね「任意加入」浸透

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◆都内の小学校で副会長務めた小説家・川端裕人さん

 PTA改革に取り組みながら、道半ばで挫折する人も少なくない。2007年から2年間、東京都内の小学校でPTA副会長を務めた小説家の川端裕人さん(55)=写真=も、自ら「負け組」と認める一人だ。08年刊行の著書「PTA再活用論」(中公新書ラクレ)で活動の負担や問題点を訴えた川端さんに、改革に失敗した理由や、当時からの変化とPTA問題の現在地を聞いた。 (今川綾音)

 −改革に失敗したのはなぜか。

 周囲を納得させられなかった。「入退会は自由だ」と僕が言っても、役員ですら「聞いたことがない」という人の方が多く、理解者は少数派だった。

 委員のなり手がいなくて強引に決めざるを得ない状況を止めようにも、かつてその「被害」に遭った人たちが今度は「加害」に回る。良心を放棄しないとやり過ごせないような現場で、精神的にもつらかった。「苦労したけれど、いい経験だった」とポジティブにはとても振り返れない。

 −この十年で何が変わったか。

 一番は、当時は認識すらされていなかった「任意加入」の原則、つまりPTAは入退会が自由だということが広く知られたこと。背景には、途中で挫折した人を含め、各地で上げ続けた声の積み重ねがある。今はPTA役員や校長でこの原則を知らない人は、まずいない。「入退会自由」とはっきり打ち出し、加入届を整備したところも増え、早期に対応しなければと考えているところも多い。

 ただ、形だけを整えても実際には非加入を選びにくい現実もある。登校班外しや、PTA主催のイベントに参加できないなど、非加入の子どもへの差別や排除のほか、保護者間で浮くのではないかという親自身の不安があるせいだ。

 −そんな中でも、非加入を選ぶ人が出てきている。

 「やらない」という選択をした人は、流されるままに会員であり続ける多くの人よりも、PTAの適正化に貢献している。非加入や退会を選ぶことで、見えなかった問題を可視化してくれるからだ。現場に踏みとどまってPTAを改善しようとする人たちと同じくらい僕は尊敬している。両者の問題意識は重なる部分があり、状況が違えば互いの立場は逆かもしれない。

 −「改革」の要望にも、いろいろある。

 今の会長らは非常に厳しい立場に置かれている。任意加入の周知など「まともな運営」が求められる一方、「コミュニティーを活性化するような活動」も同時に求められるからだ。現状、日本のPTAはずっと人権問題の警報が鳴りっぱなし。とにかく、やりたくない人・できない人の緊急避難の道の確保が優先だ。その上で、やりたい人・できる人に機会を開くような活動からこそ、力強いコミュニティーができるのでは。

 いまだに「入退会自由をうたうと担い手がいなくなる」と心配する人がいるが、それでPTAがなくなった報告はない。むしろ「PTA、強すぎ」という印象だ。同調圧力的な要素は相当しぶとく残っている。

 幸い、この十年間、各地でPTA運営の改善の事例が増えてきた。ただ「任意加入の周知」の仕方一つとっても、導入を目指す人同士で踏み出す方向や順番が違うと、互いに批判しあうこともでてくる。進め方に正解はなく、根っこの部分の問題意識を共有して進んでいくことが大事だ。

<かわばた・ひろと> 1964年、兵庫県生まれ。2007年から世田谷区立小学校のPTA副会長を2年務めた。都立高校PTAでは広報委員の経験も。小説は、少年の成長を描いた「川の名前」(ハヤカワ文庫JA)など。

 

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