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【暮らし】

<考えようPTA インタビュー編>(下) 味方をつくる政治そのもの

◆都内の小学校で会長 専修大・岡田憲治教授

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 PTAは前年度踏襲、上意下達の場だと思われがちだが、「もっと自由な自治の場だ」と指摘する政治学者がいる。自身も東京都内の小学校でPTA会長を務める専修大教授の岡田憲治さん(57)=写真。仲間をつくり、その力を引き出す「生活圏の政治」であるというPTAとの向き合い方を聞いた。 (今川綾音)

 −PTA会長を引き受けたきっかけは。

 息子が小学校のサッカークラブで仲間の親にお世話になっている。お互いさまで、僕も何かお返ししたいという気持ちで受けた。

 引き受ける過程で、おかしいと思うことがたくさんあった。次期役員を選ぶ選考委員会は独立組織なのに、現役役員の意向が反映されそうになったし…。一度は断ったけど、ずっと生活者目線で民主主義を考えてきたので、この現場は生きたデータだと腹をくくった。

 −やってみた感想は。

 平日昼間も含め、ものすごい数の会合があって「だまされた」と思った。メール一本で済む話なのに、紙ベースでやりとりするせいで、世帯数を区のPTA連絡協議会に報告するだけで二度も学校に行く羽目になったり。オフィスワーカーには信じられないシステムが旧態依然としてある。

 −変わらないのはなぜ。

 わが校の場合、足かせなのは「役員の単年度入れ替え」と「ポイント制」。一年だけ役員や委員を務めてやり過ごそうとする人たちが多く、腰を据えた改革ができない。一番楽なのは、「やることになってるから、とにかくやるの!」と前年踏襲で何も考えずに目の前のことを「処理」すること。実は、変えるのが一番面倒くさいわけ。

 ポイント制では、役員や委員を務めたり、活動に参加したりすると加点される。本来ボランティアであるPTAの活動を、「卒業まで何ポイント」と「義務」にしてしまう制度で、裏側では活動のスリム化を阻んでいる。その活動でポイントをためようと考えている方からの反発を恐れる人がいて、スムーズに活動を減らせない。本末転倒以外の何物でもない。

 −そこを突破するには。

 無駄だと思う活動を頭ごなしに否定せず、感謝を忘れず、仲間をほめ、ねぎらい、きちんと根回しして、味方をつくるのが大事だと実感した。みんな職場ではやってると思うんだけどね。

 正しいことをそのまま言えば、みんながついてくるわけじゃない。「誰も歓迎しない無駄な活動だからやめましょう」と言うと、その活動を頑張ってきた人は自分を否定されたと思って心を閉ざしてしまう。「工夫して、より素晴らしい活動をするための議論の場を設けていただけませんか?」と、相手の心を開くような提案が必要。それって政治そのものでしょ?

 −参加する意義は。

 PTAは自治のトレーニングの場。生活の延長で、お金と安全以外の失敗は経験値になる、人々の最良の力をどう引き出すかを実践できるステージですよ。職場や家庭など、それぞれの持ち場へ帰ったときに、PTAの経験は絶対に役に立ちます。

<おかだ・けんじ> 1962年、東京都生まれ。2018年から世田谷区立小学校のPTA会長を務める。専攻は現代デモクラシー論。「なぜリベラルは敗(ま)け続けるのか」(集英社インターナショナル)など著書多数。

 

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