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【暮らし】

歯科医院と管理栄養士 手を携えて歯の健康守ります

聴診器でのみ込む状況を確認する歯科医の斎藤貴之さん(左)と、管理栄養士の大西由夏さん(中)=東京都江戸川区で

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 歯科医院で働く管理栄養士が増え始めている。在宅の要介護高齢者が陥りやすい低栄養を防いだり、歯周病を引き起こす危険がある肥満や糖尿病など生活習慣病を防ぐ食生活の指導をしたりと、食と健康のプロとして専門性が期待されている。 (五十住和樹)

 「何でも食べられるようになりましたね」。八月末、東京都江戸川区の「こばやし歯科クリニック」副院長の斎藤貴之さん(41)と管理栄養士の大西由夏さん(42)らが区内の男性(89)を訪問診療した。食べやすい大きさにしたスイカやせんべいをのみ込む男性の様子を確認。男性は「うまく食べられるようになってよかった」と笑顔を見せた。

 脳梗塞を患った男性は昨年一月に退院。「口から食べるのは難しい」と当初は鼻に管を入れる経鼻栄養の状態だったが、今年二月から斎藤さんらが歯科訪問診療を始めた。まず嚥下(えんげ)内視鏡検査でのみ込む力を調べた。「かむ」のに必要な唇の力や舌圧を高める器具などを使った訓練法を教え、週一回の訪問ごとに状態をチェック。三月には軟らかい介護食が可能になり、五月には経鼻栄養をやめて普通食に。退院当初の要介護5から同1へと劇的に改善。会話も増え、介助付きで外出できるようになった。

 大西さんら管理栄養士はこれまでの訪問で、男性が好物のうどんを食べる際、汁にとろみを付けたり、うどんを短く切ったりと誤嚥を防ぐ食事を指導。「のみ込む力に応じて、安全で食べやすく、家族が負担にならない食事の提案が腕の見せどころ」という。

 同院は約十年前から管理栄養士を採用。現在は非常勤を含め五人が働く。斎藤さんは「かめなくなったり、むせたりすると自分が食べやすいものばかり食べ、栄養バランスが崩れ低栄養になりがち」と指摘。「歯が痛い」「かめない」と訴える外来患者に管理栄養士が食事指導をしたほか、二年前には「のみこみ外来」を設置。状態に応じた食物の硬さ、一口の量や栄養を考えた指導をしている。

 栄養指導で歯の疾患を防ぐ「予防歯科」の役割も。横浜市鶴見区の「うえの歯科医院」では、虫歯や歯周病を防ぐ食生活を考えてもらおうと、五年前から管理栄養士が外来患者に栄養や食事を教えている。院長の上野友也さん(51)は「歯科医院での栄養指導はほとんどなかった。『食べる健康』を患者に伝えることで、将来の介護や認知症の予防に役立てたい」と話した。

◆高齢者訪問診療の歯科医 増える摂食障害に危機感

 内科や整形外科などを診療科とする福岡クリニック(東京都足立区)で在宅訪問栄養食事指導をしている管理栄養士で、日本在宅栄養管理学会副理事長の中村育子さんによると、10年ほど前から在宅で療養する重症の摂食嚥下障害の人が増えてきた。老老介護や介護者が男性の場合は、のみ込む力に応じた適切な食事の用意が難しい。「このままでは誤嚥性肺炎や低栄養の危険が大きい」と、訪問診療をする歯科医が栄養状態の改善を図るため管理栄養士を雇い始めたという。

 だが現行では、歯科医の指示で管理栄養士が栄養指導をしても診療・介護報酬を得られない。日本歯科大の菊谷武教授(55)は「管理栄養士の専門性を生かせる制度がほしい」と訴える。

 日本老年歯科医学会が管理栄養士が働く40の歯科医院に行った2017年の調査では、栄養や調理の相談・指導が業務全体の半分以下という管理栄養士が86%を占めた。菊谷さんは「歯科医も栄養を学び、管理栄養士の使い方を考える必要がある」とする。

 

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