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【暮らし】

食卓への定着 道遠く 商業捕鯨再開4カ月

ステーキ(手前)や串カツ、刺し身などクジラ料理が並ぶ=名古屋市中区の「魚屋の台所下の一色本店」で

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 日本の商業捕鯨が三十一年ぶりに再開して四カ月。鯨肉は一般的にはなじみが薄く、消費量も激減する中、取り扱う業者などは「高タンパクで、栄養価が高い」とPRする。ただ、需要の低さや環境保護の観点などから、大手スーパーの動きは鈍く、食卓に定着する道は険しそうだ。 (長田真由美)

 鉄板から、肉の焼ける香ばしいにおいが漂う。名古屋市中区の居酒屋「魚屋の台所 下の一色本店」で八年ほど前から提供している看板商品の「クジラ肉のレアステーキ」。串カツや竜田揚げ、刺し身、皮でだしを取り、ベーコンの入ったラーメンなどクジラを使ったメニューは三十五種類に上る。

 店を経営する寿商店の常務取締役、森朝奈さん(32)は「クジラは料理法が豊富で、栄養価も高い」と指摘。主に食べられる赤身は高タンパク、低脂質、低カロリー=表参照=なことに加え、最近は疲労回復を助ける栄養素「バレニン」も多く含まれることで注目されているといい、「健康志向の今の時代に合った食材」と強調する。

 現在、店で提供している肉は日本の調査捕鯨で捕れたクジラだ。クジラの保護と資源管理の観点から、国際捕鯨委員会(IWC)が一九八二年に商業捕鯨の一時停止を決定したのに合わせ、日本も八八年に商業捕鯨を中断。一方、南極海などで資源量を調べる調査捕鯨を始めた。これまで国内で流通してきた肉は、調査後に残った「副産物」だった。

 水産庁によると、日本は調査捕鯨の結果を受け、資源量を推定。「十分な資源量が確保されている」と主張する種類について商業捕鯨の再開をIWCに提案してきたが、受け入れられず、六月末に脱退した。

 推定資源量を基に「資源に悪影響を与えない」とIWCで採択された方式を用いて捕獲枠を算出。年間にミンククジラ百七十一頭、ニタリクジラ百八十七頭、イワシクジラ二十五頭を上限に商業捕鯨を再開した。

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 「いかにおいしい食品として食べてもらえるかを考えたい」と力を込めるのは、捕鯨会社の共同船舶(東京)の広報担当、久保好(このむ)さん(57)。調査捕鯨は捕獲後に、胃の内容物などを調べるために鮮度が落ちていた。商業捕鯨では、船上ですぐに血抜きができ「これまでより鮮度のいい鯨肉を届けられる」という。

 日本の沖合で操業していた船団の母船「日新丸」が四日に下関港に帰港。その後、約千六十トンが荷揚げされた。年末にかけて本格的に出荷されるという。ただ、捕獲の上限枠もあり、国内の流通量は調査捕鯨時と変わらない見通しだ。

 一方、鯨食をめぐる環境は厳しい。戦後の食糧難時代に安価で栄養価の高い食材として普及し、学校給食にも登場した。日本政府は「古来、日本ではクジラを食料やさまざまな用途で利用している」と主張。一方、農林水産省の食料需給表によると、クジラの年間消費量はここ数年四千トン前後で、ピークだった一九六〇年代の五十分の一程度まで落ち込む。

 国際社会の目もある。欧米を中心とした反捕鯨国は「保護すべき動物で、食べるのは野蛮だ」と批判し、捕鯨の全面禁止を求める。

 大手スーパーは取り扱いに慎重だ。イオンリテール(千葉市)はグループ三千店のうち鯨肉を販売するのは、水揚げ港のある地域を中心に百店舗のみで、広報担当者は「食文化が定着していない地域で販売予定はない」と話す。アピタ、ピアゴを展開するユニー(愛知県稲沢市)は「これまでごく少量を扱っていたが、今後は未定」。西友(東京)は取り扱っておらず「今後も予定はない」という。

 

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