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【暮らし】

<男性不妊 僕がパパになるまで>(1)診断 まさか自分が原因

生後4カ月の長女莉子ちゃん(左)と公園で遊ぶ川田篤志記者。不妊治療を経て、子育てに励んでいる=東京都で

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 二〇一五年、三十四歳で結婚し、すぐ子づくりを始めた。妻(33)は当時二十九歳で、「早く子どもができたら二人目、三人目もほしいね」と期待を膨らませていた。妻も別の報道機関の記者。互いに忙しかったが、行動に移せば割とすぐに授かるだろうと考えていた。しかし、子どもができないまま三年が過ぎようとしていた昨年春、「不妊症かもしれない」という疑念を拭えなくなった。

 不妊について、日本産科婦人科学会は望んでも妊娠できないまま一年が過ぎた状態と定義している。

 われわれの場合、結婚して二年間は私が前橋市、妻が東京都内に住む「別居婚」で会えるのはほぼ週末だけ。排卵日に合わせた最も妊娠しやすいタイミングに会えないことが多く、それが言い訳になっていた。ところが都内で同居を始めて一年が過ぎようとしても妊娠の兆しが見えず、危機感を募らせた。

 妻を不妊検査に誘うのに一カ月は悩んだ。検査で原因を明らかにすることは、私と妻のどちらに責任があるか「犯人捜し」をするようで気が重かったのだ。

 意を決して妻を誘うと、あっさり了解をもらった。後日、妻は「不妊の原因は女性にあると思われがち。私から誘って『俺は関係ない。検査は受けない』と断られるのが怖かった」と明かしてくれた。世界保健機関(WHO)によると、不妊症の48%は男性に原因があり、男女による差はないという。

 不妊治療の経験がある先輩の男性記者に教わり、昨年五月七日、二人で東京都新宿区の産婦人科を訪れ、それぞれ検査を受けた。

 精液検査の結果は二時間ほどで出た。男性医師から渡された紙の「精子濃度」と「前進精子率」の項目に赤線が引いてあった。

 一ccあたりの精子の数を示す精子濃度は千百万ほどだった。WHOの基準値では、自然妊娠に必要とされる数は千五百万以上。明らかに不足していた。前に進む精子の割合を示す前進精子率は19%で、WHO基準値の32%以上にこちらも及ばなかった。

 医師はさらに私の陰のうに機器をあてて、血流を調べる超音波検査を実施。血液の逆流を示す画像を見せ、「間違いなく精索静脈瘤(じょうみゃくりゅう)ですね」と告げた。

 聞き慣れない単語に戸惑う中、渡された病気の説明資料に「精子を作る力が低下し、精子の質も悪くなり、不妊の原因になります」と書かれていた。

 医師は続けて、手術が受けられる都内近郊の病院を紹介していたが、ショックのためほとんど頭に入ってこなかった。

 三週間後、妻の結果は「問題なし」と判明した。不妊の原因は自分にあったという現実を突きつけられた。 (川田篤志)

 ◇ 

 男性不妊の原因の一つで、精子を作る機能が低下する病気「精索静脈瘤」を患った入社十二年目の政治部記者(38)が診断から手術、第一子を授かるまでの体験を四回にわたってつづります。夫婦間の葛藤や、不妊に対する男性の当事者意識の低さなど、男性不妊をめぐる実態と課題にも迫ります。

 

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