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【暮らし】

<家族のこと話そう>親を納得させた手紙 舞台俳優・山下啓太さん

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 出演中の「パリのアメリカ人」で演じる資産家の息子アンリはミュージカルスターの夢を抱き、別の進路を望んでいた両親の思いに悩みながらも、意思を貫きました。実は私も、似た状況でした。

 父(59)は病院の技師、母(60)はパートで共働き。私は四人きょうだいの三男で、四人を育てるのは経済的にも大変だったと思います。それでも「いい大学に行き、いい会社に就職してほしい」と小学校から塾に通わせてくれました。中学でカナダ、高校ではアラスカにホームステイをさせてくれ、自然と将来は国を超えてコミュニケーションのできる仕事がしたいと思うようになりました。

 俳優を意識したのは高校三年の時。子どものころから、目立ちたがり屋で、その時の運動会では応援団長としてクラスを盛り上げていました。参観に来た両親も喜んでいて、「人を笑顔にする俳優の仕事がしたいのかも」と。

 アルバイト代をため、その年の十二月に劇団四季の「ライオンキング」を見に行きました。俳優の息遣い、躍動を肌で感じ、役を演じきった俳優たちがカーテンコールですがすがしく、観客席と向き合う姿を見て「舞台俳優を志す」と決意。受験の直前に、両親に打ち明けました。

 「頑張れ」と言ってくれると思いきや、二人とも大反対。特に母はかたくなで「話が違う」と。三日三晩話し合いましたが、平行線でした。

 思いをきちんと伝えるため手紙を書きました。「成功は約束できないが、息子が決めた道を進むのを見てほしい。いつか、この仕事で恩返ししたい」などとつづりました。

 母が折れ、認めてくれましたが、高校卒業後に大学などに通うことが条件。父は「恩返しの前に、まずこの仕事で自立することを目指しなさい」と諭してくれました。思いだけが先走っていた私を二人が落ち着かせてくれました。

 両親は舞台のことはほとんど知りませんが、劇団四季に合格した時には大喜び。ライオンキングのシンバ役に選ばれた時は、親戚がそろって見に来てくれました。母の携帯電話の待ち受け画面は、公演プログラムに載ったシンバ役の私の写真。兄たちにも「自慢の弟」と言われた時は、ぐっときました。対立しても親子で向き合い、結び付きが深まったと感じています。

 ミュージカルはさまざまな観客の方々とのコミュニケーションとも言え、留学経験が舞台にも生きている。歌いながら踊り、演じるのは大変で、入団当初は何度も声をつぶしました。でも、やめたいと思ったことはない。この道を進むことが、自分を信じてくれた両親との約束ですから。

 聞き手・出口有紀/写真・内山田正夫

<やました・けいた> 1987年、神奈川県生まれ。東京都内の短大で演劇を学び、卒業後、2008年に劇団四季に入団。17年から「ライオンキング」の主人公シンバを演じている。現在は、20年1月5日まで名古屋四季劇場(名古屋市)で上演中の「パリのアメリカ人」にアンリ役の一人として出演。(問)劇団四季=電0570(008)110

 

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