東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 11月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<男性不妊 僕がパパになるまで>(3)手術 痛み、心労 想像以上

精索静脈瘤の手術で使う顕微鏡=東京都渋谷区で

写真

 精巣(睾丸(こうがん))周辺にある静脈の血流が滞留してこぶができ、精子をつくる機能が衰えてしまう「精索静脈瘤(じょうみゃくりゅう)」。私(38)は診断を受けた翌月の二〇一八年六月、この病気の手術を年間約二百件手掛ける男性不妊専門の「恵比寿つじクリニック」(東京都渋谷区)でオペを受けると決めた。

 診断を受けた産婦人科からは大学病院など三カ所を紹介されたが、決め手はこのクリニックで手術を受けた患者のブログだった。私はどんな施術内容か心配だったが、妻(33)が探してくれたブログの詳細な体験談を読み、クリニックへの信頼が芽生えた。

 土、日曜日に開院していることも助かった。手術前後も検査がたびたびあったが、十回の通院も仕事を休まずにできた。

 この病気の手術の方法は複数ある。私が受けたのは顕微鏡下低位結紮(けっさつ)術。執刀医は鼠径(そけい)部を二センチほど切開する。オペ用の顕微鏡をのぞきながら動脈やリンパ管、神経をよけ、陰のうにこぶをつくる原因である静脈を縛って切る。精巣の萎縮が極めてまれに起きる可能性があるが、日帰り可能で再発率や合併症のリスクが低いのが利点だ。

 土、日曜日の手術は二カ月超の予約待ち。執刀は、自民党総裁選の取材を終えた九月二十九日だった。

 私は二つの精巣の周囲にそれぞれこぶがあり、手術は予定通り二時間で終わった。ただ陰のう周囲への局所麻酔はくぎを刺されたような激痛。しかも静脈を縛る時は、体内の管という管が引っ張られる感覚に襲われ、「いっそ意識がなくなる全身麻酔が良かった」と弱気にさえなった。

 無事に成功し、極度の緊張からようやく解放された。付き添ってくれた妻と自宅までの帰り道。痛み止めが効かず、鼠径部の痛みからトボトボ歩く私を「おじいちゃんみたい」と笑う妻。手を握って寄り添ってくれることがうれしかった。

 振り返ってみると、正直手術の痛みや心労は想像以上だった。不妊治療を続ける女性も同じかそれ以上の痛みを感じていると思うと、改めて不妊治療の厳しさを痛感した。

 二日後の月曜日から仕事ができた。痛み止めを飲めば普段通りの生活ができ、一週間後には患部の抜糸を行い、まもなく妊活を再開した。

 手術の狙いは、精巣周辺の血液の滞留を解消し、精巣内の温度上昇を抑えるなどして、精子の質を改善すること。効果を確かめる精液検査は、術後一カ月から毎月受けることになっていた。ただ執刀医の助川玄(すけがわげん)副院長(43)によると、術後一カ月を待たず効果が表れる場合もある。

 吉報はふいに届いた。術後初めての検査を受ける二週間前の十月二十一日。自宅のトイレから「できた」と、妻の叫び声。妊娠検査薬は確かに陽性を示していた。

 だが、手術の効果が出たか判然とせず、妊娠は早すぎると思い込んだ私は「ちゃんと産婦人科で確かめた方が良いよ」とつれない態度を取ってしまった。一緒に喜んでくれると思っていた妻は大激怒。今でも愚痴を言われている。

 四日後に産婦人科を受診した。小さな命はちゃんと宿っていた。出産予定日は二〇一九年六月二十七日と言われた。 (川田篤志)

 =次回は十九日掲載

精液中の精子の数が少ない人の精液

写真

精子の数が多く自然妊娠が可能な人の精液=いずれも恵比寿つじクリニック提供

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報