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【暮らし】

<わたしの転機>親も子も癒やす場に NHKアナウンサーから児童医療ケア施設の責任者

NHKアナウンサーから、医療的ケア児の短期入所施設のハウスマネジャーに転身した内多勝康さん=東京都世田谷区で

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 取材先で、子どもの介護に疲れ切る親の悲痛な叫びを聞いた。それがきっかけで、元NHKアナウンサーの内多勝康さん(56)は3年前にNHKを退職し、人工呼吸器などが必要な子どもたち「医療的ケア児」と、家族が休息できる短期入所施設の責任者になった。「社会に支援の輪を広げたい」という。 (細川暁子)

 「一日一回は、死にたいと思います」。アナウンサー時代の二〇一三年に、二十四時間介護が必要な医療的ケア児と家族の取材で、あるお母さんがそうつぶやきました。一年中、子どもから離れられず気持ちが張り詰め、夜も眠れない親たちの苦悩が凝縮された言葉にショックを受けました。

 福祉関係の取材が長く、通信教育で社会福祉士の資格を取得。定年後は福祉の仕事で社会貢献したいと考えていたところ、一五年に知人から、国立成育医療研究センター(東京)に医療的ケア児と家族が休息できる施設が開設されることを聞き、責任者としての就任を打診されました。当時、五十一歳。新しいことに挑戦したい気持ちもあり、「断ったら一生後悔する」とNHKを退職しました。

 一六年に短期入所施設「もみじの家」のハウスマネジャーに就任。施設は障害福祉サービスの一環で、一カ月で最大九泊でき、部屋代は一泊二千円から。施設には看護師や保育士が常駐しており、親子で泊まってもいいし、子どもを預けてもいい。

 仕事は利用予約やスタッフの労務管理など、運営全般。慣れない事務職で、最初は収支のグラフをエクセルで作ることもできませんでした。でも、普段は美容院にも行けず疲れ切ったお母さんたちが、施設でリラックスしている様子を見るのが何よりうれしい。

 子どもにも、他の子や看護師らとの触れ合いが刺激になります。最初は反応がなかった寝たきりの子が看護師らと音楽を聴いたり、遊んだりするうちに、一年後には声を掛けると手を動かせるようになりました。

 医療的ケア児は保育園や幼稚園に受け入れてもらえないことが多い。家に閉じこもっていた親子にとって、もみじの家は社会とつながる場所なのです。

 運営は厳しく、昨年度も千九百万円の赤字ですが、ありがたいことに個人や企業の寄付金でまかなえています。私も昨年、新天地での経験や医療的ケア児の課題をまとめた著書を出し、印税の一部を寄付しています。

 アナウンサー時代、当事者の声こそが一番強く、社会を変える力があると思って取材をしていました。今もその思いは変わりません。ここに来る親子の思いを伝え、社会に支援の輪を広げるのが私の役割です。

 

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