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【暮らし】

読み聞かせで認知症予防 都長寿研が研究 脳の「海馬」萎縮抑制に効果か

絵本の読み聞かせをする斎藤幸男さん(右)と伊藤美喜子さん=東京都北区で

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 絵本の読み聞かせを高齢者が行うことで認知症予防に役立つ可能性があることが、東京都健康長寿医療センター研究所(都長寿研、板橋区)の鈴木宏幸研究員(38)らの研究で分かった。読み聞かせの実践で、脳の機能が活性化。記憶や空間学習能力をつかさどる脳の器官である海馬の萎縮率を抑制でき、認知機能の低下に一定の歯止めがかけられたという。 (五十住和樹)

 研究は二〇〇四年から開始。都長寿研が開発した読み聞かせプログラムを受講し、その後に読み聞かせ活動を続けた男女十七人(開始当初の平均年齢六六・四歳)のグループと、健康チェックだけを行う男女四十二人(同六八・六歳)のグループに分けて調べた。一人につき六年間追跡、記憶力をつかさどる海馬の容量を磁気共鳴画像装置(MRI)で測定し、六年間の萎縮率を算定した。

 海馬は加齢に伴い自然と萎縮するが、萎縮率を抑えられれば認知機能の衰えを軽減できる。結果、読み聞かせグループの平均萎縮率は0・5%に抑えられたが、もう一方は年相応の4・1%と大きく差がついた。

 このプログラムは、認知機能低下の抑制を目的に厚生労働省の研究助成金で作った。一回二時間で全十二回。読み聞かせの技術のほか、個別発表会やグループワークもある。週一回ペースで三カ月で修了できる。

 心理学が専攻の鈴木さんは「読み聞かせの一連の活動は脳の機能の活性化に役立つ」とする。季節や対象年齢を考えた本選びから、うまく読むために中身を覚え、声が届くように発声の練習も必要。さらに本番でも感情移入などの表現、最後まで読み切る体力まで求められるからだ。

 一〇〜一二年には、プログラムを活用した記憶力検査も行った。受講した男女二十九人と、そうでない男女二十九人が参加。全員が「認知症でないが、物忘れに不安」という六十五〜八十八歳。聞いた短い文章を三十分後にどれだけ正確に話すことができるかをチェックした。

 プログラムを受けたグループは記憶保持率が受講前の62・7%から受講後には74・0%に向上。もう一方は58・8%から56・7%とほぼ横ばい。鈴木さんは「読み聞かせの訓練で記憶力がよくなった」とみる。

 プログラムの普及をめざすNPOが各地で講座を開いている。講座修了後、参加者の九割が読み聞かせ活動を継続する自主グループを結成。現在は中央区や杉並区など都内九区、立川市や横浜市青葉区、滋賀県長浜市など、プログラム実施の全国二十地域で高齢者らによる絵本読み聞かせ活動が広がっている。

◆子どもとハイタッチ「パワーをもらった」

 東京都北区の西が丘保育園。10月初旬、赤頭巾姿の斎藤幸男さん(83)と伊藤美喜子さん(81)が約20人の5歳児の前で絵本を開いた。立ったまま約30分で読んだのは「おねしょのせんせい」(フレーベル館)など4冊。絵本の世界に入り込んだ2人は盛り上がる場面では大きな身ぶりを交え、話に聞き入る子どもたちを喜ばせた。

 2人は2016年に読み聞かせプログラムを受講。斎藤さんは「子どもが好きだから」、伊藤さんは「認知症に効くという言葉にひかれた」と動機を話す。受講後は10人のグループで保育園や小学校、老人ホームなど年約20カ所で読み聞かせをしている。図書館などで本を選び、自宅で練習を繰り返す。月1回、専門家を招いたグループの勉強会で腕を磨いている。

 帰り際には子どもたちとハイタッチを繰り返し、「また来てね」と声もかかった。「これは社会参加。介護予防を実感します」と斎藤さん。伊藤さんは「子どもたちからパワーをもらい、自分が若くなった気がする」と話していた。

 

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