東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 11月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

精神疾患ある親の子へ 生き抜く方法まとめ本に

「生きる冒険地図」の「学校生活」のページ(学苑社提供)

写真

 精神疾患がある親の子どもが、不安定な生活環境の中で自分を守り、生き抜く方法をまとめた本「生きる冒険地図」を、さいたま市の支援団体がつくった。親の障害や病気の説明を受けないまま、親の代わりに家事や年下のきょうだいの世話を担い、孤立する子どもも少なくない。親が食事を用意できなかったり、大人の助けが必要になったりする時にどうしたらいいのか。すぐに実践でき、不安が軽くなる対処法を盛り込んだ。 (出口有紀)

 二〇一九年版の障害者白書などによると、統合失調症やうつ病などを患う精神障害者の数は約四百十九万人。意欲が低下したり、幻覚や妄想があったりして日常生活をうまく営めず、子どもの世話もできずに、子どもが親の介護をしていたり、虐待やネグレクトに近い状態に置かれていたりするケースもある。

 本をつくったのは、心の不調を抱えた人と家族を支援する活動をしているNPO法人「ぷるすあるは」。会の代表理事で、精神科医の北野陽子さんと看護師の細尾ちあきさんがこれまでの経験をもとにまとめ、六月に学苑社から出版した。

本を手に「困っている子どもたちが手に取れるようにしてほしい」と話す細尾さん=さいたま市内で

写真

 家庭に頼れる大人のいない小中学生程度の子どもたちを想定。食事や学校生活などのテーマ別に、具体的な生きる方法をイラストを用いながら、分かりやすく紹介している。

 例えば、親が食事を用意できない時に備え、炊飯器の使い方や、多めに炊いてラップに包んで冷凍しておくことを推奨。サツマイモやジャガイモをラップで包み、レンジで温めれば、おやつに。遠足などで弁当が必要な時はコンビニで買い、弁当箱に詰め替える。

 学校の運動会などでゼッケンを付ける必要があるのに親に付けてもらえないときは、木工用接着剤を使って体操服に貼り付ける。

 SOSの出し方も。夜でも大人がいる警察やコンビニ、大きな病院を見つけておくことや、連絡する公衆電話の場所を確認しておくことを奨励。警察や消防には小銭がなくてもかけられることも伝えている。

 親に対しても、自らの体調が悪い時には学校に伝えるなどのアドバイスも掲載。当事者や学校関係者が子どもの視点を知るきっかけにもなる。

 精神科クリニックなどでの勤務経験の長い細尾さんによると、精神障害のある患者についてくる子どもたちには親の服薬管理などの介護を担う一方、親からは、社会の偏見などをおそれ病気の詳しい説明などをされていないケースが少なくない。親の調子が悪く元気がない時には「自分のせいかも」などと感じ、周囲に相談できずに孤立しがちだという。

 鈴鹿医療科学大(三重県鈴鹿市)准教授で、精神障害の親を持つ子どもの支援に詳しい土田幸子さん(55)らが一四〜一五年に実施した調査では、子どものころに精神障害の親と暮らしたことがある人六十四人のうち、親の障害について子どものうちに説明を受けていたのは約三割だった。

 日によって言動が変わる障害がある親の場合、子どもに「かわいい」と言った翌日に「向こうに行って」と邪険にすることも。土田さんは「病気の説明がないまま、子どもは調子がいい時の親を求め、ずっと顔色を見る。この状態が慢性的に続けば、強いストレスがかかり、大人になっても親への複雑な思いに苦しむ人も少なくない」と言う。

 こういった親子を支援しようと、細尾さんと北野さんが一二年から親の心の病気を子どもに伝えたり、逆に子どもの気持ちを親に伝えたりする絵本などを制作。「生きる冒険地図」もその一つで、細尾さんは「日々の関わり合いのヒントにもなる。子どもたちの目につきやすい場所に本を置いてほしい」と話す。

 ◇ 

 A5判で、全四十八ページ。千三百二十円。問い合わせはホームページ=「ぷるすあるは」で検索=から。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報