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【暮らし】

<新時代の働き方 広がるフリーランス> (下)契約のない「雇用」

共用オフィスで他の利用者にまじってパソコンに向かう石原怜さん(左)=千葉県柏市で

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 十一月の平日午後、さまざまな業種の人が使う千葉県柏市内の共用オフィス。フリーのITエンジニア、石原怜さん(33)は一人、ノートパソコンに向かっていた。ここが、職場だ。

 三年間勤めたIT企業を辞めて独立したのは二十八歳の時。主に、スマートフォンのアプリ開発や地元企業のホームページ制作に取り組む。取引先を開拓するのも契約を勝ち取るのも全て自分の努力次第。この一年で、やっと会社員時代の収入に追いついた。

 独立を後押ししたのは、インターネットをはじめITの発達という。新調したのは、パソコン一台だけ。「後はスマートフォンさえあれば」と笑う。万が一、体調を崩して働けなくなっても、会社員だった時のような補償はないが「仕事内容も時間も場所も、自分で選べるのがいい」。

 内閣府の推計によると、専業、副業・兼業を問わず企業に属すことなく個人で仕事を請け負う「フリーランス」は三百六万〜三百四十一万人。就業者全体の約5%に上り、国は今後さらに増えるとみる。かつてフリーランスといえば、建設業の「一人親方」や編集者、翻訳家などの専門職が大半だった。しかし、ネットが普及した今はハードルが低くなり、スマホのアプリ経由で飲食店の宅配を請け負う「ウーバーイーツ」の配達員に代表される単純労働にも及ぶ。介護や育児などで時間に制約のある人にとっても選択肢の一つだ。

 雇用類似−。フリーランスの増加を受け、最近注目されるのが、この言葉だ。会社と雇用契約は結んでいないものの、実態は雇用されているのと同じような働き方をすることを意味する。二〇一七年に労働政策研究・研修機構が行った独立自営業者の就業実態に関する調査によると、過去一年間で取引先が一社しかない人が四割を占める。

 労災保険や最低賃金など労働者を守る法律の対象外とされるフリーランスは、企業から得られる報酬が頼り。取引先が限られれば、足元を見られ、声を上げにくい。フリーランスで働く人を中心に約二万一千人でつくる「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」(東京)が行ったアンケートでは、回答のあった百九人の約七割が「報酬の一部未払いを経験したことがある」と答えた。

 厚生労働省は二年前から有識者による検討会で、雇用に似た働き手の権利の保護について議論している。契約条件の明示やトラブル発生時の相談窓口の設置、突然仕事が打ち切られた際に備えた救済策などがテーマだ。しかし、一口にフリーランスといっても、提供できる技術や時間などは個人差が大きく、統一的な基準を設けるのは難しい。

 少子高齢化に伴って人手不足が深刻さを増す中、必要に応じて仕事を頼めるフリーランスは、企業にとって便利な存在だ。一方で、働き手にとっては安価な労働力として利用されてしまう恐れをはらむ。フリーランス協会の代表理事、平田麻莉さん(37)は「特に、代わりがいる単純な仕事ほど不安定な働き方になりやすい」と指摘。「既に、非正規労働者の受け皿になっている面もある」と訴える。

 雇用と自営のはざまで漂うフリーランスをどう守るのか。ルール作りは待ったなしだ。 (添田隆典)

 

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