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【暮らし】

<食卓ものがたり>酸味を強みに町おこし ダイダイ(静岡県熱海市)

水平線を望むダイダイ畑で色づき始めた実をいとおしそうに見る岡野谷伸一郎さん=静岡県熱海市で

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 正月のしめ飾りに使われるかんきつ類のダイダイ。温泉地として知られる静岡県熱海市は、国内有数の産地だ。近年は、飾りとしてだけでなく、「熱海の味」としてPRする取り組みも始まっている。

 中心部から南へバスで十五分。十一月半ば、相模湾を見下ろす高台に、高さ三〜四メートルの木々が広がっていた。実はまだ色づき始めたばかり。「正月には名前の通り、だいだい色に熟します」とJAあいら伊豆の石坂誠さん(25)は言う。

 冬が過ぎても実が落ちず、翌年、翌々年と新たな実に交じって枝に残ることから「代々」の名が付いたとされる。江戸時代に港町として栄えた網代地区が近く、ダイダイの産地だった紀州の船乗りによってこの地にもたらされたという。

 現在の生産量は七十五トンほど。酸味が強いため生では食べられず、九割以上が正月飾りとして出荷される。四代続く農家から畑の半分を借り受け、今年初めて栽培に取り組んだ岡野谷(おかのや)伸一郎さん(45)は「実ができてホッとしています」。飾り用は見た目が勝負。害虫や病気に細心の注意を払う。夏から秋の台風通過時は気が気でなかったという。

色が深まりつつある12月初旬のダイダイ

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 ただ、正月飾りの需要は減っている。二十年前には三百軒を数えた農家は、高齢化や後継者不足もあって八十軒まで減少。一方で、町おこしに役立つとして注目を集めるのが、果汁を使ったサワーや果実入りの菓子などだ。

 地元出身の岡野谷さんはもともと酒店店員。飲食店の求めで果汁を搾る仕事を始めたことが縁で栽培に携わった。宿泊客数は一時の落ち込みから回復しつつある熱海だが、人口は四万人を切り減少が続く。「畑を守ることが、雇用や移住に結びつくといい」。縁起物のダイダイが、街に福を呼びこむ日を夢見る。

 文・写真 小中寿美

◆味わう

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 食用に注目が集まったのは、農家の倉田とし子さん(73)手作りのマーマレードが7年前、熱海商工会議所認定のご当地ブランドに選ばれたのがきっかけ。正月飾りとして使われない実は放置、廃棄されることが多く「もったいない」と考えたことが理由だ。ゆでた後に水で洗う作業を繰り返して苦味を抑え、奥深い味に仕上げた。マーマレード(200グラム入り600円)をはじめ認定商品=写真=はJR熱海駅直結のラスカ熱海などで販売。また、市観光協会などのホームページでは、魚や肉を引き立てる果汁を活用する飲食店を紹介している。

 

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