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【暮らし】

<どうする相続>山林の名義変更忘れずに 手続きの簡素化検討

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 不動産の中でも、資産価値が低いことの多い山林。所有者が亡くなった後、相続登記(相続時の登記簿上の名義変更)をしないまま年月がたつと、所有者不明となることもある。こうした土地は売買も困難で開発などが頓挫したり、人の手が入らず荒れて環境が悪化したりする恐れも。たとえ「いらない土地」でも、相続時にはしっかり名義変更しておきたい。 (砂本紅年)

 「亡き夫の遺産に義父が購入した北海道の原始林がある」(横浜市・女性)、「遺産に岡山県の山林があるが、自治体に問い合わせても場所を特定できない」(浜松市・女性)、「長野県にある山林の境界が分からず、処分できない」(愛知県春日井市・女性)−。

 生活部には、山林の処分などに悩む読者の投稿が寄せられている。実際、山林の多くは、不便な場所や開発困難な地域にあり、都市部の相続人は所有意識が希薄になりがち。「将来値上がりする」とだまされ土地を購入した「原野商法」の被害もあり、大半は資産価値も低い。

 山林は所有者が亡くなった後、相続すると、法務局での名義変更が必要。戸籍など提出する書類もあり、手続きが煩雑だ。さらに固定資産評価額の0・4%の登録免許税がかかり、手続きを司法書士などに依頼すると費用も膨らむ。

 相続人には管理義務もあり、名古屋市の司法書士鈴木慎太郎さん(46)は「山林は維持するだけでも費用や手間のかかる『負動産』のイメージが強い」と話す。

 このため、名義変更せずに放置される例も後を絶たない。複数の相続人がいるのに遺産分割されていない遺産は、相続人全員の共有状態となっている。年月がたつほど相続人が増え、権利関係が複雑化し、戸籍謄本などをたどっても特定できなくなる。

 災害による倒木の撤去作業や、崖崩れ防止の工事などをしたくても所有者が分からないと対応できず、防災や災害復旧も滞る可能性がある。鈴木さんは「山林を相続したら必ず名義変更を」と呼び掛ける。

 鈴木さんによると、境界がはっきりしていなくても名義変更の手続きはできる。権利関係が複雑でなければ、専門家に依頼せずに自分で手続きすることも十分可能。山林の整備や管理も、間伐に補助金が出るなど国の手厚い支援制度があり、うまく活用すれば、実費を大幅に抑えることができるという。

 また、ことし四月には、所有者が十分に管理できていない民有林を、市町村を介して林業従事者に委託できる森林経営管理法が施行。現在、市町村が所有者の意向などについて調査を進めているが、名義変更をしていないと、調査票が届かない可能性もある。鈴木さんは「市町村の問い合わせがあった場合に備え、自分の山林管理に対する考えを整理し、しっかり伝えてほしい」と話す。

 一方、法制審議会は、相続登記の手続きの簡素化などを盛り込んだ法改正に向け、議論を進めている。民法で認められていない所有権の放棄も検討され、鈴木さんは「名義変更をしておけば、放棄にも備えられる」とメリットを強調する。

 ただ、原野商法の舞台になった土地は相続登記後、二次被害として測量、除草、売買などを勧誘されることがある。ダイレクトメールなどには注意したい。

<所有者不明土地> 登記簿でも直ちに所有者が判明せず、判明しても連絡が取りにくい土地。所有者探索に時間がかかり、公共工事などの開発や災害復旧・防災工事などが滞る課題を抱える。この問題への対応を議論してきた研究会によると、2016年度の所有者不明土地の面積は、九州の面積を上回る約410万ヘクタール。うち過半の面積を山林が占めると推定される。研究会の提言を受け、議論を進めている法制審議会の部会は今月3日、中間試案を公表した。

◇困り事や体験談募集

 相続に関する困り事や体験談を募集します。メールseikatut@tokyo-np.co.jp、ファクス03(3595)6931。件名に「どうする相続」と記入を。

 

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