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【暮らし】

変わる「社歌」主役は社員 みんなで作詞、夢や絆歌い一体感

手話付きの社歌を歌うツクイの社員=横浜市で

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 企業が作る「社歌」が様変わりしている。かつては経営理念を表し、社員の帰属意識を高めるためのものが多かったが、最近は社員が自らの夢ややりがい、絆を表現する形が主流に。多様化する働き手の一体感を醸成するとともに、企業のイメージアップに欠かせないツールとなっている。

 「僕らはみんな かけがえのない仲間 あなたを運ぶ 未来の風になる」

 爽やかなメロディーが耳に心地よいNTTデータの社歌は、旧来のイメージと一線を画して「One Song」という呼び名が付けられている。二〇一三年に制作し、一八年、歌いやすいようにリニューアルした。海外進出で企業規模が急拡大する一方、「統一感がなくなる」との懸念がきっかけだったという。日本語と英語のバージョンがあり、国内外の社員ら約十二万人が歌える。

 作詞の方法はユニークだ。社員に「やりがいを感じるのはどんな時か」「心を動かされる瞬間は」などのアンケートを行い、集まった回答に含まれる約一万語の傾向を、同社が開発した言語解析システムで分析、社員らが歌詞を考えた。

 昨年入社した小黒遥香さん(22)は「曲を聴くと、海外にいる人も自分と同じ気持ちで働いているんだ、自分も頑張ろうと思える」と話す。

 介護事業を手掛けるツクイの社歌は、聴覚障害があるスタッフが振り付けた手話付きだ。作詞・作曲は「職員一同」。新人研修でも「福祉分野の会社に入った実感が湧く」と好評という。

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 ヘルパーはシフト制だったり、自宅から現場への直行直帰だったりして、互いに顔を合わせることが少ない。小林久美子取締役は「事業拡大に伴い、ケアの大切さや仕事への誇りを、一緒に確認する機会が減った。歌なら覚えやすく、思いを浸透させやすい」と話す。

 社歌に詳しい作家でジャーナリストの弓狩匡純(ゆがりまさずみ)さんは、最近の傾向について「会社と社員の距離感や、経営陣の悩みが変化したことが反映された」という。

 弓狩さんによると、日本最古の社歌は戦前の南満州鉄道(満鉄)のもの。一九五〇〜七〇年代の高度成長期や八〇〜九〇年代のバブル期には多くの企業で作られたが、終身雇用の見返りに社員に忠誠を誓わせ、収益増のために発奮させる「トップダウン型」の色合いが濃かった。

 しかし二〇〇八年のリーマン・ショック以降は景気低迷と雇用の流動化で、人材確保や定着が課題に。社員が主体の「ボトムアップ型」による歌づくりで社内の結束を固め、風通しの良さをPRする狙いがある。

 「会社から強要されていた年配者に比べ、若い世代は肯定的に受け止めている」(弓狩さん)。社員が歌って踊る様子を動画サイトにアップし、就活生からは「社員の顔が見えて好印象だった」との声も聞かれる。企業のニーズをとらえ、JTBベネフィットは音楽制作会社と提携し、新たに社歌の制作サービスを開始。早くも問い合わせが相次いでいるという。

 

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