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【暮らし】

<食卓ものがたり>難儀なお菓子 愛情込め 金平糖(京都市)

釜の中の金平糖を専用のコテでかき混ぜる5代目の清水泰博さん。奥は、4代目の誠一さん=京都市左京区で

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 ザラザラザラザラ。斜めになって回転する直径二メートルの円形の釜の中で、ピンク色の金平糖(こんぺいとう)「苺(いちご)みるく」が湿り気のある低い音を立てて転がる。「沈んだ音がしているうちは、まだまだ。サラサラという高音になったら、いいあんばい」

 京都市左京区にある一八四七年創業の金平糖専門店「緑寿庵清水(りょくじゅあんしみず)」。工房を仕切る五代目・清水泰博さん(55)が、釜の熱で顔を真っ赤にしながら、コテで金平糖をゆっくりとかいていた。真冬でも四〇度を超え、夏場は温度計の五八度の目盛りから針が振り切れる。

 核となる「イラ粉」と呼ばれる約一ミリのでんぷん質の粒に、砂糖を溶かした蜜を絡ませ、二週間以上かけて一センチ大まで大きくする。

 同店の金平糖にはレシピがない。形のよいイガ(突起)を作るため、天候や温湿度によって、釜の温度と角度、回転スピード、蜜の濃度を微調整する。泰博さんは「一番大事なのは金平糖の立てる音を聞くこと。赤ちゃんの泣き声と同じで、温度を下げろ、蜜を濃くしてくれ、って全部知らせてくれる」と話す。

 朝早くに火を入れたら、夕方まで釜の前に立ちっぱなしだ。音を聞き逃さないよう、食事も工房の隅でとる。金平糖作りの過酷さを、泰博さんは愛情を込めてこう表現する。「ほんまに難儀なお菓子なんや」

 一五四六年にポルトガルから伝わったという金平糖は、高級品として珍重された。時間と手間をかけて作られるため、長い年月をかけて築く家庭と通じるとして、結婚や出産の寿菓子としても愛されている。

 同店では当初は砂糖味のみを作っていたが、泰博さんの父で、四代目の誠一さん(78)が梅や柚子(ゆず)の味に挑戦。「別の素材を加えると砂糖とうまく結晶しない」という常識を覆し、果物などを用いた約百種類の味を生み出してきた。

 「なめずに、かんで召し上がって」。泰博さんの妻の若おかみ・珠代さん(43)に促され、紫蘇(しそ)味の一粒を口に含む。奥歯でかむとシャリッと歯応えよく崩れ、紫蘇そのものの香りと優しい甘みが一気に広がった。

 文・今川綾音/写真・黒田淳一

◆買う

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 本店(京都市左京区)と祇園店(同市東山区)で購入できる。「桃」「巨峰」など通年販売の小袋(各599円)のほか、「苺みるくの金平糖」(1月発売、3520円)、「究極のキャラメルあられの金平糖」(2月発売、4400円=写真)など、季節限定品も。地方発送あり。問い合わせは、本店=電075(771)0755。

 

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