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【暮らし】

介護施設で子ども食堂 「役に立てる」前向きに

デイサービス施設で開かれた子ども食堂で、お年寄りたちがボランティアとして子どもを見守る=名古屋市中川区で

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 高齢者らの介護施設で、子ども食堂を開く取り組みが広がりつつある。施設を利用するお年寄りや若年性認知症の患者らが、ボランティアで食堂の運営に参加し、子どもたちとふれ合って楽しんだり、役割を持つことで前向きな気持ちになったり。子どもたちには介護を身近に感じる機会にもなり、多世代交流の場としても注目されている。 (細川暁子)

 「かわいいねえ。よく来たねえ」

 名古屋市中川区の高齢者向けデイサービスセンターで十九日に開かれた子ども食堂。午前十一時の開店と同時に続々と集まってきた親子連れに、デイサービスなどを利用するお年寄りたちが声をかけた。この日のメニューはきしめんとコロッケ。子どもは無料、大人は三百円で、約三十組の親子が訪れた。

 子ども食堂は、施設を運営する社会福祉法人「フラワー園」が二〇一八年九月に開始。一六年に成立した改正社会福祉法で社会福祉法人の地域貢献が義務付けられたことを受け、毎月一回開いている。

 食事は委託業者が用意し、職員や学生ボランティアが配膳。食堂ではだし取りや流しそうめんなど子ども向けの体験教室もあり、センターを利用するお年寄りが指導役になり、見守る。

 センターに併設され、同法人が運営するケアハウスに入所する鬼頭道子さん(89)は、体験教室のボランティアとして毎回参加。この日はせっけん作りで、星や花の形にこねる子どもの様子を見守りながら「普段は高齢者同士でしか話さないので子どもの声を聞くだけで元気になる」と笑う。

 地元の小学五年生板谷望咲(みさき)さん(11)は、小学校の体験学習で介護施設に見学に行ったことが縁で、半年ほど前から子ども食堂に家族と通うように。「介護施設はお年寄りだけの場所だと思っていたので最初は行きづらかった。でも、何度も来てお互い顔見知りになったので、毎月来るのが楽しみ」と話す。

 同法人主任生活相談員の小嶋明さん(40)は「ここは、多世代がごちゃまぜになって過ごせる。子どもたちが介護職を身近に感じることで将来の担い手になってくれたら、という期待もある」と言う。

 埼玉県三芳町社会福祉協議会が運営するデイサービス「けやきの家」では、若年性認知症の患者らが子ども食堂を運営。一六年から週に一回、ひとり親や生活保護など貧困家庭を対象に、無料で食事を提供している。五十、六十代の若年性認知症の六人が自分たちでメニューを考え、食料の買い出しに行き、食事を作る。毎回、親子約二十人が食事を食べに来ている。

 施設管理者の内城一人さん(46)によると、きっかけは、利用者からの「人の役に立ちたい」という声だった。「若年性認知症の人はデイサービスに来ても、高齢者向けの体操などを『つまらない』と感じて、来なくなることもある。『子どもたちの生活を支えている』と感じることで、前向きな気持ちになってもらえたら」と話す。

 静岡福祉大福祉心理学科の楢木博之准教授(48)は「少子高齢化が進み、介護も子育ても地域で支える必要性が高まっている。お年寄りと子どもが自然に集まれる場所が出てきた意義は大きい」と評価。一方で、介護施設側にとっては高齢者と子どもたちの両方に目を配る必要があり、金銭的な負担も大きい。「法人の善意に頼り運営を任せきりにするのではなく、行政の支援も必要だ」と話す。

 

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