東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

産後クライシス防げ 夫婦の転換期…会話を

話し手と聞き手の2人一組になって行う「シェアリング」をする受講者=東京都武蔵野市で

写真

 夫婦にとって、赤ちゃんが生まれた直後はパートナーシップの大きな転換期。だが、気付くと以前のように互いの思いに耳を傾ける時間はほとんどない、という家庭も少なくない。特に心身が激変する女性が気持ちを言葉にして相手に伝えることで、産後クライシスや、産後うつを防ぐ「心の産後ケア」が注目されている。 (今川綾音)

 「今から三分間、自分の頭に思い浮かぶことをペアの相手に話してみて。支離滅裂でも大丈夫」

写真

 東京都武蔵野市で今月中旬に開かれた産後ケア教室には、産後二〜六カ月の女性七人が赤ちゃんと参加した。講師は、産前産後支援をするNPO法人マドレボニータの産後セルフケアインストラクター、吉田紫磨子さん(48)=写真=だ。

 バランスボールを使った運動で体をほぐした後、二人一組で「シェアリング」というワークに挑戦。語り手は「人生」「仕事」「パートナーシップ」の中からテーマを一つ選び、三分間、思いの湧くままに話す。「保育園に入れるか心配」「育休中、私だけが家事をしていてモヤモヤする」「夫と二人でキャンピングカーで日本一周するのが夢」−。聞き手はメモを取りながら口を挟まずに話を聞き、要約した内容を四十五秒間で相手に伝える。

 終了後、参加者からは「三分間は意外と長かった」「全然言葉が出てこなかった」という感想が。吉田さんは「産後は赤ちゃん中心の生活になり、夫とも事務的な会話しかしなくなりがち。自分を主語にして考えなくなると言葉も出てこなくなる」と指摘。「仕事への向き合い方やパートナーシップが大きく変わるこの時期だからこそ、希望や不安を言葉にすることは大事なこと」と強調した。

 言葉で伝え合うことは、出産後、パートナーとの関係が冷え込む「産後クライシス」を防ぐ手立てにもなる。「ここでの『シェアリング』は夫としゃべるための練習です」と吉田さん。関係悪化の多くは妊娠、出産と大きな変化にさらされた妻の側が「なぜ私だけが…」というモヤモヤを感じながら夫にうまく伝えられなかったり、妻のSOSに夫が気付かなかったりするすれ違いから起きるからだ。

 「夫に対しては『言わなくても分かってるよね』と、コミュニケーションが雑になりがち。でも、一日三分でいい、日々の生活のことや今後の働き方、将来の夢などを共有できたら、子育て期を一緒に乗り切っていけるはずです」

 講座を受けた産後四カ月の同市の会社員太田百合子さん(39)は、「テーマに沿って考え、話すのは久々で戸惑った。でも、夫との家事育児の分担で悩んでいることも、察してもらいたいと考えるのではなく、言葉で伝えようと思った。将来についての深い話もしてみようと思えた」と振り返った。

 日本周産期メンタルヘルス学会評議員を務める産婦人科医・宗田聡さん(56)=広尾レディース院長=は、約一割の女性が陥る「産後うつ」を防ぐ観点からも、不安を言葉にする「心の産後ケア」の必要性を指摘する。「ここ二、三年、産後の女性の『体』だけでなく『心』のケアの重要性も認知されてきている。産後うつの原因は、孤立してしまうこと。真面目な人ほどなりやすいが、会話の中で不安を言語化し、夫や周囲のサポートを受けることで予防できる」と話す。

     ◇

 子育てサイト「東京すくすく」は、吉田さんを講師に招き、記事中のワークを体験できる会を、二月二十三日午前十時三十分から、杉並区のセシオン杉並で開きます。申し込みは「東京すくすく 子ども・子育てメッセ」から。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報