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【暮らし】

<環境視点>「食べたものが、私になる」 映画「いただきます ここは、発酵の楽園」オオタヴィン監督に聞く 

子どもたちに囲まれるオオタ監督=福岡市の高取保育園で(いでは堂提供)

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 ドキュメンタリー映画「いただきます ここは、発酵の楽園」が公開中だ。園児たちが無農薬の米や野菜を作り、食べて育つ姿などを通して、土と発酵の力に光をあてた作品。発酵ブームをひもとく「食育」に加え、生物多様性や国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」を考えるヒントも見え隠れする。「発酵の楽園」って、どんなところで、どこにある? オオタヴィン監督に聞いた。(論説委員・飯尾歩)

 −園児が自分で食べるみそを自分でつくる福岡市の高取保育園に密着した前作「いただきます みそをつくるこどもたち」の続編です。

 「一番大きなテーマは前作と全く同じ。『命の循環』です。生き物は、土から生まれる命を食べて生きている。元気になる。そしてやがて土になる−。その仲立ちをするのが微生物、発酵菌と呼ばれる、小さな小さな命です。映画冒頭の『食べたものが、私になる。』というテロップが、すべてを語ってくれています。今回は、発酵文化の担い手でもあるオーガニック農家、里山で有機野菜を育てる保育園など『農』にスポットを当てました」

 −有機農法と発酵との関係は。

 「里山の恵みをおいしくいただき、残したものや野菜くずなどは自らの手で畑に埋め戻す。それらが土の中の微生物(発酵菌)に分解されて堆肥に変わり、やがて芽生える野菜の糧となる。そこで再び育つ野菜が子どもたちの体をつくる。子どもたちは土と遊び、微生物いっぱいの土から育った野菜を味わうことで、命の循環を五感で感じる。命をいただくことを知るんです」

 −主な舞台になった山梨県甲州市にある「みいづ保育園」の収穫祭で園児たちが育てた米をとぎながら交わす会話の場面が、とても印象的でした。「神様が入ってるんだよ」「そうだよ、こん中に」「小さい神様がいるよ」「ちっちゃ過ぎるな」「あっ、神様、こぼれちゃったよ」−。

 「実はあの時は、米をとぐ子どもたちの手先をカメラに収めたかっただけ。全く偶然、録音できた会話です。驚きました。自分らの命や体をはぐくむものが、あの子たちには、ちゃんと見えている。自らの手で心を込めて育てた食べ物だからでしょうね」

 −みいづ保育園のシーンで感じたことは、これは生物多様性の映画ではないのかと。十年前、名古屋市で生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)が開かれました。最大の成果が「名古屋議定書」。自然や生き物を保護するだけでなく、命の恵みを大切に育て、分け合い、いただきながら、後の世に伝え残すためのルールです。

 「発酵の楽園とは、命の楽園、生物多様性の楽園で、『いただきます』は楽園の扉を開く魔法の言葉なのかもしれません。みいづ保育園の日原瑞枝園長も映画の中で、<畑の中には野草もいっぱい、雑草もいっぱい生えている。ただそれが自然遊びの材料というだけではなくて、実は食べられるっていうところをまず子どもたちに知らせたい>と言っています。

 身土不二(しんどふじ)。楽園は文字どおり、私たちの足元にある。国連に言われるまでもなく、人間の持続可能性を保つためにも、まっとうなものを、しかも、おいしく食べようよ、できれば子どものころからね。今回のメッセージも、そんなシンプルなものなんです」

      ◇

 「いただきます ここは、発酵の楽園」は、東京都武蔵野市のUPLINK吉祥寺で三月半ば、名古屋市東区の名演小劇場で三月初めごろまで上映予定。

自ら育てた米をとぐ、みいづ保育園の園児たちの手=「いただきますここは、発酵の楽園」から

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