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【暮らし】

<やめたいやめられない 性依存と向き合う>(上) トラウマを抱えて 衝動で性行為「つらい」

風俗通いがやめられずに悩む女性。時間が空くと、ついスマホで予約状況を見てしまう=近畿地方で(一部画像処理)

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 時間が空くと、突き動かされるようにスマートフォンに手が伸びる。検索するのは女性に男性が性サービスをする風俗店のサイトだ。

 近畿地方に住む女性(34)は、不特定多数の男性との性行為がやめられない。福祉系の専門職として働き、夫もいるが、連日の風俗通いで月給の大半をつぎ込むことも。ストレスがたまると衝動が起きやすく、「性行為のことで頭がいっぱいの自分が死ぬほど嫌い。でも、やめられない」。風俗の空きがなく、予約がとれないと、逆にほっとする。

 理由の一つには幼少期の経験と家庭環境が影響していると感じている。

 小学生のころ、年の離れたいとこに風呂場で性器を触られ続けた。父は酒を飲んでは母に暴力を振るい、家には常に緊張感があった。いつからか自慰行為で緊張が和らぐことを覚えた。

 孤独や不安を紛らわそうと高校時代から援助交際をし、大学生になると風俗店で働いた。手に入れたお金で男性を求めて風俗店に通い詰めるように。「性行為をしているときは、いやなことを忘れることができた」

 自制が利かず、出会い系サイトで頻繁に相手を探した大学生のころ、「普通じゃない」と心療内科を受診。だが、医師から「専門外」と言われた。昨年、依存症の自助グループに入り、夫にも告白。性衝動を断ち切ろうと丸刈りにもした。「意思の力ではコントロールできない。苦しい」

 愛知県の会社員女性(34)も十代から、不特定多数の男性との性行為を繰り返している。「こんな自分でも生きていていいと思える」

 十四歳のとき、彼氏の家で複数の男性に乱暴された。母親に打ち明けたが、生活が荒れていたことを指摘され、「好きで行ったのだろう」と突き放された。

 高校時代から援助交際で毎日相手を換える生活。二十歳で結婚し、出産もした。だが、昼間に子どもを母親に預け、週に三〜四日は夫以外の男性と関係をもった。夫に知られてもやめられず、四年後に離婚。その後、さらに頻度が増えた。うつ状態で、自傷行為も繰り返した。

 性犯罪のニュースなど、過去を思い起こさせるものに触れると衝動が高まる。「体だけの関係」の複数の男性と連絡を取り、出会い系アプリでも探す。

 衝動は性欲より、復讐(ふくしゅう)心に近いという。「自分を求めてくる相手を『ばか』と見下す。でも、終わって冷静になると、ばかは自分とむなしくなる」

 二人のように衝動的に性的な行為を繰り返す状態を病気ととらえ「性依存症」とも言う。人間関係の破綻や仕事を失う、性病に感染するなど重大な結果をもたらし、痴漢や盗撮、強制わいせつなどの性犯罪につながることも少なくない。

 性依存に詳しい大森榎本クリニック(東京)の精神保健福祉士で、二千人以上の臨床経験のある斉藤章佳さん(40)によると、性依存の人には、成育歴に虐待や性被害などのトラウマ(心的外傷)を抱えているケースが少なくない。「性的な行為を通じてしか自己の存在価値を感じられなかったり、周囲と関係を築けなかったりする。生活に影響が出て、本人も苦痛を感じているのにやめられない場合は病的で、適切な治療が必要」と指摘する。

 ◇ 

 本人や周囲に破滅的な影響を及ぼしながらも、性的な行為を繰り返す性依存。規範意識の問題ととらえられがちだが、背景には誰とも心のつながりを感じられない孤独や不安がある。「やめたくても、やめられない」人たちの心の傷を見つめ、回復への道のりを考える。 (芳賀美幸)

<性依存症> 性行為やポルノへの過度な執着、強迫的な売買春、痴漢など性的な行為を繰り返し、自分でコントロールできなくなる。世界保健機関(WHO)の診断基準では、不特定多数との性行為や過度な自慰行為を「強迫的性行動症」とし、痴漢やのぞきなど性犯罪化するタイプを「パラフィリア障害」と分類。依存症に含めることは賛否両論がある。

 

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