東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<やめたいやめられない 性依存と向き合う>(下) 広がる自助グループ 回復目指して悩み共有

ミーティングで性依存症の悩みを共有する人たち=東京都世田谷区で

写真

 「親に自分のセクシャリティーを否定され、自暴自棄になった」

 一月に東京都内であった、性依存からの回復を目指す自助グループ「SCA(セクシュアル・コンパルシブズ・アノニマス=無名の性的強迫症者の集まり)−JAPAN」のミーティング。依存症になった経緯や現状報告などを自由に話す「分かち合い」の時間で、四十代の男性はとつとつと語った。

 大学生の頃、恋愛対象が同性であることを両親に打ち明けた。父は怒り、母は泣いた。それから薬物使用や不特定多数との性行為を繰り返すように。昨年、重い性感染症に感染していることが分かった。

 SCAに通い始め一年。最初は、なぜ、性行為をやめられないのか分からなかったが、仲間から「両親への恨み」を指摘された。

 何度も語り合う中で「両親は両親なりのやり方で、受け入れようとしてくれていたのでは」と言われ、気付いた。「同性が好きというセクシャリティーを自分が恥じる思いがあり、それが翻って両親への反発になっていた」。自分を肯定することができ、依存から徐々に抜け出そうとしている。

 SCAによると、性依存の人は性衝動で生活に支障を来す一方、性的な行為が現実逃避やストレス発散の唯一ともいえる手段となっている。ミーティングにスーツ姿で参加した四十代男性は、借金をしながら風俗通いを続け妻と離婚。四十代の女性は次々と相手を換え、三日間寝ずに性行為をしたことを打ち明けた。いずれも共通するのは「やめたいけど、やめられない」病的な状態であることだ。

 だが、認知度は低く、治療に取り組む医療機関はほとんどない。また、性的な話は言い出しにくい上、周囲に話しても「趣味嗜好(しこう)の問題」とされ、当事者は孤立しがちだ。そんな中、アルコールや薬物などの依存症と同様に当事者同士がつながり、支え合いながら回復を目指す自助グループの活動が広がりつつある。

 SCAは米国で始まり、国内では二〇〇二年に東京で発足。現在は、名古屋や福岡、長野にも広がる。

 東京グループのミーティングは週に一回一時間半ほどで、三十〜四十代を中心に十人ほどが集まる。お互い、どこの誰なのかは知らない。匿名性を守るためニックネームで呼び合う。

 性衝動の根幹には、怒りや恐怖、自己否定といった感情があるといい、仲間との対話を通じて、その原因が何なのかの「気づき」を促す。性行為に没入していない「性的なしらふ」を長期間保っている仲間を「スポンサー」として助言をもらいながら、回復のための計画を作成。やめたい行為や対象▽衝動が起こる時間や状況などのパターン▽依存から抜け出すために取り入れたい行動や考え方を分析していく。

 アルコール依存症からの回復プログラムを応用したものだが、酒や薬物のように完全に依存対象を断つのではなく、各自が「性的なしらふ」の状態を定義。自分や相手を大切にできる「健全な距離感」を取り戻すことが目標という。

 性依存に詳しい大森榎本クリニック(東京)の精神保健福祉士、斉藤章佳さん(40)は「回復には自らの体験や思いを話し、信頼できる人に受け止めてもらう作業が大切。仲間からの共感で、ありのままの自分を受け入れることができるようになる」と話す。

 SCAの参加者の一人は言う。「同じ悩みを持つ仲間とつながることで、苦しんでいるのは自分だけじゃないと知ってほしい」

 (芳賀美幸)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報