東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<家族のこと話そう>子の人生本人のもの 整理収納アドバイザー・井田典子さん

写真

 広島で生まれ育ち、短大を卒業し就職。二十三歳で結婚し、上京して専業主婦になりました。二男一女の母です。

 長男(31)の育児は「完璧な親になろう」とコントロールしてしまいました。友達と公園で遊びたいのに、「昼食の時間」と長男だけ連れ帰ったり。ルール・時間厳守の育児で、ご近所で「軍隊みたい」と言われていたそうです。

 十歳の長男がテストで高得点でも褒めず、「算数ができるなら社会も頑張れば?」と言ってしまいました。長男は「僕はママの作品なの?」と泣きました。初めての反抗にショックでしたが、「本人のため」との思い込みから気持ちは理解できませんでした。

 長男は中学からテニスに打ち込みましたが、高校一年の時にけがで退部。部員仲間とも疎遠になり、学校も休みがちに。金髪、喫煙、飲酒と荒れていき、私と口もききません。ただ胃袋ではつながっていました。毎日空の弁当箱を持ち帰り、夕飯を取っておくと深夜に食べていました。

 ママ友に「でも毎日帰ってくるんでしょ? 安心できる居場所なんだよ」と言われ、救われました。長男は「どうしていいか分からなかった」と振り返ります。一番苦しかったのは本人。寄り添えなかったことを反省しています。

 長男は美大に進学しましたが、二年の途中で「音楽をやりたい」と中退。さすがに夫(60)も突き放し、長男は八年間一人で暮らしました。ディスクジョッキー(DJ)を目指し、夜はライブハウスで修業。食べていけず、日中は飲食店などでアルバイトをしたため、体調を崩したことも。

 三年ほど前、「DJで一人前になる」と出直すつもりでオーストラリアに単身渡航。この年末年始、現地で再会しました。見違えるように元気。「健康でなければDJとして人を楽しませられない」と、玄米食など食生活にも気を使っています。街を歩けば、友人・知人から声がかかる。生き生きと人生を歩み、うれしかったです。子どもの人生は本人のもの。子は親の所有物ではなく、社会に出るまでの預かりものですね。

 整理収納の勉強を始めたのは、長男が荒れていた約十五年前。気分転換に家を片付けていると、次男(24)に「楽しそうだね」と言われたのがきっかけかも。長女(29)によると、当時の私は「常に『話し掛けるなオーラ』を出していた」そうです。

 私の両親は広島で被爆。教員だった父は生涯、平和活動に打ち込みました。私は、そんな両親に引け目を感じていました。でも家の中を整理すると、心が平らになる。これも平和活動のかたちなのでは…と今は思えます。

<いだ・のりこ> 1960年、広島市生まれ。整理収納アドバイザーとして200軒以上を「片付け訪問」し、整理術を伝授。「ガラクタのない家」(婦人之友社)など著書、メディア出演多数。昨年12月まで生活面で「住まい彩り」を連載した。

 聞き手・北村麻紀/写真・五十嵐文人

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報