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【暮らし】

<支え合う 介護保険20年>(4)ヘルパーの葛藤 低賃金 やりがい頼み

一人暮らしの木根信吉さん(右)の自宅で、朝食を食べるよう話しかけるヘルパーの小林聖子さん=静岡県三島市で

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 朝食の野菜スープとパンを用意すると、手早く夕食用の豚汁を仕上げ、続けて掃除や洗濯に。二月上旬、静岡県三島市の訪問介護事業所「ラ・サンテふよう」所長で、ホームヘルパー小林聖子さん(52)は利用者の木根信吉さん(89)宅でてきぱきと家事をこなした。

 午前九時半から九十分。「朝ご飯、少しでも食べてくださいね」。さりげなく声掛けし、様子を観察。入浴も手伝った。

 木根さんは一人暮らし。長男を若いころに亡くし、妻は介護施設に入所する。認知症があり、かつて身なりは乱れ、家にはごみがたまっていた。数年前に要介護認定を受け、現在は要介護1で、週五日の訪問介護を受ける。木根さんは「小林さんたちが来てくれると安心する」と喜ぶ。

 その後、小林さんは八十代の夫婦の家で掃除。正午すぎには脳梗塞のまひが残る男性(89)宅で血圧を測り、体をタオルで拭いた。「お年寄りの生活を支える、やりがいがある仕事」

 国は介護保険を始めた二十年前、在宅介護の推進を掲げ、その後、住み慣れた地域で医療、介護などが提供される地域包括ケア構想を打ち出した。ホームヘルパーはその中心。要介護認定者宅を訪問し身体介護を行うには介護福祉士の資格を取るか、自治体などが実施する規定の研修を修了する必要があり、高いスキルが求められる。

 だが、慢性的なヘルパー不足で働く環境は厳しさを増す。厚生労働省によると一月の訪問介護職の有効求人倍率は一五・四一倍に上り、全職種の一・四四倍と比べかけ離れている。介護労働安定センター(東京)の一八年度の調査によると、回答した約九千百事業所の八割が訪問介護員が不足と答えた。

 ラ・サンテふようも二十年前は二十四人のヘルパーがいたが、今は七人。今月も一人が辞めた。利用者は四十四人おり、小林さんが一日八軒を回ることも。今月近くの病院が人手不足で訪問介護をやめ、利用者一人を引き継いだ。

 人が集まりにくい一因が、待遇の低さだ。厚労省によると、ホームヘルパーの賞与込みの平均月給は二六・一万円。全職種の平均より約十万円も低い。人手不足でも、介護保険で介護サービスの価格が決まっており、介護職の賃金は上がりにくい。

 利用者からのハラスメントも。三重県内のホームヘルパーの女性(53)は訪問先で後ろから男性利用者に体を触られた。「横暴な対応に耐えられずに辞めた仲間をたくさん見てきた」

 厚労省によると、一六年度の介護人材は約百九十万人。二五年度には約二百四十五万人が必要と見込まれ、淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「ヘルパーの報酬を上げることに加え、利用者のマナー向上も必要」と指摘する。

 厳しい環境の中でも、小林さんは利用者からの感謝の言葉や笑顔に支えられてきた。「家で最後まで暮らしたいという思いを支えるのが私たち。その気持ちをずっと持ち続けられるような仕組みにしてほしい」

 (この連載は、細川暁子、五十住和樹、出口有紀、佐橋大が担当しました)

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