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【暮らし】

<支え合う 介護保険20年>「ヨタヘロ期」を堂々と 老いを示し、社会変える

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 健康寿命と平均寿命の間の十年前後を、ヨタヨタ、ヘロヘロとよろめきながら進む「ヨタヘロ期」と名付けた東京家政大名誉教授の樋口恵子さん(87)。「人生百年時代の先陣を切る世代として、発信する責任がある」と、雑誌「明日の友」でエッセー「人生百年学のすすめ」を連載中だ。ヨタヘロ期真っただ中の樋口さんが、ユーモアたっぷりに語る超高齢社会への提言とは。 (五十住和樹)

 健康寿命は「自立して日常生活を送れる期間」を示す。最新の二〇一六年は男性が七二・一四歳、女性が七四・七九歳。同年の平均寿命は男性八〇・九八歳、女性が八七・一四歳で、樋口さんが言うヨタヘロ期はそれぞれ八・八四年、一二・三五年となる。

 女性問題のジャーナリスト・評論家として活躍する樋口さんは、介護保険制度をつくるのに力を尽くしたことで知られる。一九八三年には「高齢社会をよくする女性の会」を設立。近年は女性の老いという視点も加え執筆、講演を続ける。

 提言その1は「子ども食堂だけでなく、シニア食堂を」。年をとるにつれ、面倒になるのが食事作りだ。「女は、八十歳前後で『調理定年』が来る」ときっぱり。自らを「独居型栄養失調症」と呼ぶ樋口さんは二〇一七年夏、暑さで、パンと牛乳、ヨーグルトにジュースといった組み合わせで簡単に食事を済ませる回数が増加。逆流性食道炎と貧血に陥った。

 内閣府によると、一人暮らしをする六十五歳以上の高齢者は男女とも増加傾向だ。一五年は男性が約百九十二万人、女性が約四百万人に上る。シニア食堂があれば、年老いても共に食べる喜びを感じられる。一方で「『お一人シニア』向けの安くて簡単、作り置きができるおいしい長生きレシピをつくってほしい」とも。男も女も「生きるために調理場に立て」と激励する。

 高齢者にとって社会参加の重要な機会となるのが買い物だ。人と会って話し、欲しいものを選ぶ。「老年よ、サイフを抱け」と呼び掛ける中、提言2として掲げるのは「買い物支援は不可欠」だ。ヨタヘロ期の高齢者がコメやしょうゆなど重い物を持って歩くのは無理。一緒に買い物に出たり品物を届けたりする人やサービスが必要と訴える。

 大事なのは、買い物を含め家事などができなくなった時、素直に「助けて」と言えるかどうか。提言3は「ケアされ上手になれ」だ。他人を部屋に入れたくない、冷蔵庫の中を見られたくない…。「人の世話になりたくないシニアは一番の困りもの」と断言。「自分の老いにどう妥協するかで人間性が問われる。長寿は、本当に試練です」

 年を重ねるにつれ、増えるのが認知症だ。国の研究によると、九十歳を超えると六割ほどが認知症になるとされる。提言4は「認知症を含め、人間の老い方を天下に示したい」。少子化が進む今は「親の介護を支える家族がいない『ファミレス(ファミリーレス)社会』」だ。助け合うには、老いや認知症を隠してはいけない。「自分の家族ではない人にも関心を持って手助けして」と促す。

 目指すのは、ヨタヘロ期の人が風景に溶け込む街づくりだ。そうなれば、誰もが「老いるとはどういうことか」をイメージできる。提言5は「街にベンチや清潔なトイレを」だ。あちこちにベンチがあれば疲れても安心。ヨタヨタ、ヘロヘロとトイレを探して歩く必要もない。「いくつになっても、人とコミュニケーションができる社会ってのが大きな願いでございます」

 ◇ 

 隔月雑誌「明日の友」(婦人之友社)の連載は2016年にスタート。連載に書き下ろしを加え、昨年末に出版した最新刊「老(お)〜い、どん! あなたにも『ヨタヘロ期』がやってくる」(同、1485円)は5万部を売り上げている。

 

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