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【暮らし】

<環境視点>観光立国パラオの対策 サンゴ守れ 日焼け止め規制

サンゴと魚を同じ水槽に入れ、共生関係を調べるスタッフ=パラオ国際サンゴ礁センターで

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 サンゴ礁に囲まれた太平洋の楽園、パラオ。日本をはじめ世界各地から年間10万人以上が訪れる観光の島だ。一方、地球温暖化によるサンゴ礁の減少や、観光関連施設から出るごみ処理への危機感は年々強まっている。全人口2万人の6割以上が集中するコロール州を訪ねた。 (写真も、高橋信)

 「観光客の九割近くはサンゴ礁が目的なんだ」。パラオ国際サンゴ礁センター(PICRC)の最高経営責任者(CEO)、イムナン・ゴルブーさん(50)は胸を張る。パラオのサンゴ礁の総面積は、国土を上回る五百二十五平方キロメートルにも。観光資源であるだけではない。サンゴ礁はナポレオンフィッシュなど約千四百種類の魚の生息地として生物多様性を保ち、高波が島へたどり着くのも防ぐ。

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 パラオは一月から国としては世界で初めて、「サンゴ礁の成長に有害」との指摘もあるオキシベンゾン、オクチノキサートなど十種類の物質を含む日焼け止めの販売、持ち込みを禁止した。業者が違反した場合は千ドル(約十万円)以下の罰金、個人が持ち込んだ場合は没収となる。

 背景にはサンゴ礁減少への危惧がある。海水温の上昇が招く白化現象は、減少の原因の一つ。サンゴの中には褐虫藻(かっちゅうそう)が共生し、光合成で作り出した栄養をサンゴに与える。しかし、海水温がおおむね三〇度を超えると褐虫藻は外へ。その結果、サンゴは白くなる上、栄養が得られず死に至る。

 パラオでは一九九八年と二〇一〇年に大規模な白化現象が確認された。PICRCが〇二年から隔年で観測調査したところ、白化したサンゴ礁が再び元の状態に戻るには九〜十二年かかることが明らかになった。

 センターでは、パラオの内海の一部に生育する、高い海水温でも白化しにくいサンゴの生態について研究を進める。火薬を使った漁をやめるよう求めるなどサンゴ礁の保全へ調査や提言を続けてきたゴルブーさんは「われわれに温暖化は止められない。だからこそ次に起きることを予測し、対処する方法を研究すべきだ」と指摘。「最後の一個体が死ぬまであきらめない」

 環境保護の面から、もう一つ、パラオが力を入れるのがごみ対策だ。国の公共事業局の廃棄物担当者、カルビン・イケシルさん(49)によると、パラオ全土で排出されるごみは一日三十五トン。その65%はホテルやレストランなどの商業施設からだ。量が少なく、焼却施設を造っても採算が取れないため、ごみは原則として埋め立てられる。州は〇八年、国唯一のリサイクルセンターを設置。廃紙などを使った堆肥製造をはじめ、ごみを再利用し埋め立て量を減らす努力を続ける。

 中でも注目は、瓶などの廃ガラスを花瓶やコップなどの工芸品に加工する試みだ。廃ガラスを溶かす熱源は廃プラスチックを油化したもの。その油などで発電機を動かし、炉を温める。センターに集まる月間約十八トンの廃ガラスのうち三〜四割が生まれ変わる。州政府職員の藤勝雄さん(76)は「ガラス細工を産業として確立できれば、観光にも役立つ」と意気込む。センター内には大規模なガラス工房を建設中だ。

 パラオは入国時、「美しくユニークな島を保護することを誓います」というスタンプを旅券に押し、署名するよう旅行者に求める。観光客も現地の取り組みを理解することが不可欠だ。

廃ガラスを加工するスタッフ=リサイクルセンターで

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