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【暮らし】

<食べきりのすすめ>手間かけず「一汁一菜」 料理研究家・土井善晴さんに聞く 

みそ汁を作れば食品ロスはなくなると話す土井善晴さん

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 食品ロス削減に向け、国が三月に策定した基本方針に、「一汁一菜」の食事が盛り込まれた。冷蔵庫などに残る食材をみそ汁に入れて使い切ろうという発想だ。政府の食品ロス削減推進会議委員で、具だくさんのみそ汁を中心とした一汁一菜の食事を提唱する料理研究家の土井善晴さん(63)は食材のむだをなくし、暮らしに余裕をもたらすと説く。家にあるもので、手軽に無駄なく食べる方法とは。 (河郷丈史、生津千里)

 −「一汁一菜」とは、どのような食事ですか。

 ご飯とみそ汁、保存食としての漬物。この「汁飯香」を大きな柱とする和食のスタイルです。みそ汁というとワカメや大根、豆腐、油揚げなど限られた具材をイメージする人が多いですが、何でもいい。野菜や肉、魚を入れて具だくさんにすれば、おかずの一品を兼ねます。

 余っている野菜を入れたり、魚の骨でだしを取ったりすれば、何一つむだにならない。おのずと食品ロスはなくなります。

 だしを取るときは、みそ汁にそのままかつお節を入れて、かつお節も食べればいい。昆布もはさみで細切りにして入れたら、早くだしが出るし、全部食べられる。煮干しも同じで、カルシウムが取れます。

 栄養が足りないと思ったら、それを補う食材をみそ汁に入れればいい。みそ汁を全ての栄養素を含む完全食品にする。

 −料理の負担が減ります。

 手を掛けるのが料理、という考え方がありますが、そこはもう少し合理的に考えるべきですね。みそは自然がつくったもので、それだけで一つの味ができあがっているんです。だから、誰でもすぐに作れるし、まずくなりようがない。どんなに忙しくても、帰宅して十分もあれば作れる。

 相撲取りのちゃんこ鍋も「鍋」と言っていますが、あれは具だくさんのみそ汁のこと。だから、若い人が相撲部屋に入門しても、すぐにちゃんこ番ができるんですよ。

 −いろんな料理を食卓に並べたいと考える家庭も少なくない。

 食卓にいっぱいの料理を並べるのがよしとされたのは、戦後の高度経済成長の時代。それまで日本人の庶民の多くは、日常的に一汁一菜だったと思います。いまだに多くの人が食卓にいっぱいやらないと、良い家庭をつくれないと思いこんでいますが、自縄自縛の、高いハードルを設けてしまったんですね。毎日献立を変えるのはプロでも、すごくエネルギーがいる。

 余裕があり、ああ、食べたいなと思うものがあったらおかずをつくる。なかったら、つくらなくていいんです。日本人には(日常を表す)「ケ」と(非日常を表す)「ハレ」の世界観がありますが、「ケ」の方はみそ汁、一汁一菜に任しとけ、ということです。

 一汁一菜という和食のスタイルは毎日おいしいと感じられ、健康でいられる。食品ロスがなくなり、やりたいことをする時間ができ、余裕も生まれる。そういう意味で、日本人が持つべき「武器」として、ありがたい考え方やと思いますね。

 −土井さん自身は一汁一菜を実践していますか。

 自分で料理して食べるときには、一汁一菜を頭に置いています。冬の間、よく鍋をされたでしょう。今の人が言う鍋って、一汁一菜のことですよ。具だくさんの汁と、ご飯。みそ汁でなくとも、しょうゆ汁であったり、ポン酢で食べたり、同じことです。

<食品ロス削減推進法の基本方針> 昨年10月施行の食品ロス削減推進法に基づき、消費者や事業者、国の役割などを定めた。消費者の行動のヒントとして「余った食材を活用した『一汁一菜』なども含め、家にある食材を計画的に使い切る」と記載。自治体は方針を踏まえ、独自の計画を定める努力義務を課される。国内の2016年度の食品ロスは家庭から291万トン、事業者から352万トンの計643万トンと推計され、国連世界食糧計画の食糧援助量の約2倍。こうした現状を踏まえ、国民運動として削減を進める。

◆余り物使ってみそ汁作ろう

 余り物を使って、どんなみそ汁を作ることができるのか。料理教室「インターティアラ・お料理サロン」(名古屋市東区)校長で管理栄養士の伊藤華づ枝さん(68)にレシピ(材料は二〜三人分)を紹介してもらった。

 まず、冷蔵庫にある卵や納豆を使ったキノコとのりのみそ汁。東北の納豆汁のイメージで、丸大豆の納豆でも良いが、ひきわりの方がより汁になじみやすい。キノコとのりからうま味が出るため、だしをとらなくてもおいしく味わえる。

 刺し身などに添えられる大根のつまは、みそ汁の具にぴったり。「生臭い」と捨ててしまう人もいるが、水で洗えばにおいはほとんど消える。

 余り物だけでなく、旬の食材を入れ、季節感を出すのもいい。伊藤さんのおすすめは、ネギのような見た目で、くせがなく食べやすい山菜「ウルイ」。合わせみそで仕上げると、ウルイの緑が映え、気分も明るくなる。タケノコやフキも、春を感じられる食材だ。エビの頭でだしを取ると、濃厚なビスク風の味わいになり、バターやトマトもアクセントに。ハム、ベーコンなどを加えてもおいしい。

 ほかに、サバ缶やツナの水煮の缶詰の汁が余ったら、みそ汁に入れると、野菜などの具材と合い、うま味がぐっと増す。

◇キノコと納豆

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<材料>

ひきわり納豆1パック、卵1個、のり1枚、エノキ1/3袋、赤みそ30g程度、水400ミリリットル

<作り方>

<1>ボウルに納豆と卵を入れ、よくまぜる<2>鍋に水を入れて沸かした後、のりをちぎって入れ、エノキを加え、みそをとく<3>鍋に(1)を加え、卵に火が通るまで熱する

◇大根のつま

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<材料>

大根のつま30g、ニンジン30g、ジャガイモ70g、赤みそ40g、かつおだし汁400ミリリットル

<作り方>

<1>大根のつまを水で洗う<2>ニンジン、ジャガイモを千切りにする<3>鍋にだし汁を入れ、(1)と(2)を煮てからみそを溶く<4>器に盛り、お好みでネギやミツバなどを加える

◇ウルイとワカメ

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<材料>

ウルイ2本、絹豆腐90g、新ワカメ適量、合わせみそ35〜40g、かつおだし汁400ミリリットル

<作り方>

<1>ウルイは斜め切り、絹豆腐はさいの目切り、新ワカメは洗って食べやすい大きさに切る<2>鍋にだし汁を入れ、絹豆腐とワカメを煮る<3>ウルイを加え、さっと火を通してからみそを溶く

◇エビの頭バター風味

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<材料>

エビの頭4〜5個、ニンジンの皮適量、タマネギの皮適量、ミニトマト2個、ニンジン30g、キャベツ1枚、ジャガイモ70g、ポテトチップス適量、米みそ30g、バター10g、水500ミリリットル

<作り方>

<1>エビは頭を外し、すりこ木などでつぶす<2>鍋に水を入れ、つぶしたエビの頭、ニンジンの皮、タマネギの皮と一緒に3〜5分煮出し、ざるでこす<3>1/4に切ったミニトマト、いちょう切りにしたニンジン、小角切りにしたキャベツ、7ミリ角くらいに切ったジャガイモを入れ、煮る<4>野菜が軟らかくなったら、米みそを溶く。火を止めてバターを落とす<5>器に盛り付け、お好みでポテトチップスを砕いて入れる

 

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