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【首都圏】

<お空のみかた 予報士記者の気象雑話>避難のタイミング 台風19号参考に「基準」作りを

都道の被害状況を確認する都西多摩建設事務所の職員=東京都日の出町大久野で

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 台風19号は、関東甲信越や東北地方に大きな爪痕を残しました。気象庁は、十三都県の広範囲にわたる地域に「命を守る行動を」と最大級の警戒を呼びかける特別警報を出しました。ところが、土砂崩れや河川の水があふれ返った被災現場では「大丈夫だと思った」と、避難しなかった住民が数多くいました。

 台風が上陸した十二日から、一級河川の浅川が氾濫危険水位に達した東京都八王子市や、都道の崩落で一時孤立状態となった日の出町、家屋が河川に崩落したあきる野市の現場を訪れました。

 河川があふれ、自宅近くの都道を泥水が勢いよく流れていたという五十代女性は「大丈夫だと思ったので避難しなかった。ペットもいるし…」。日の出町で不安な夜を過ごした七十代男性は「今までひどい災害はなかった」と話しながらも、「まさか、こんなことになるとは」。

 八王子市では、全人口の約三分の一にあたる十八万八千六百九十人に避難指示が出ました。しかし、避難したのは、最大で八千四百五十七人、わずか4・5%に過ぎません。「経験上、大丈夫」と判断して避難しなかった人も多いのではないでしょうか。これは異常事態が起きたときに「正常の範囲内で、自分は大丈夫」という思い込みです。心理学では「正常性バイアス」といいます。

 正常性バイアスは必ずしも悪いものではありません。日常のささいな変化に反応していたら、生活できません。ある程度の鈍感さも必要です。とはいえ、特別警報が発表される災害は「数十年に一度」の規模です。正常性バイアスのストッパーを解除する必要があります。

 「避難勧告」や「避難指示」は、正常性バイアスを抑え込むきっかけの一つ。人ごとではなく「自分のこと」として避難行動を取るには、さらに一歩進んだきっかけを作る必要もあります。避難勧告が出た時の雨量、台風の進路、近くの川の増水の程度…。今回の台風を振り返り、地域ぐるみで避難の基準を探ってみてはいかがでしょうか。何も基準がなく「大丈夫」と判断するのは最も危険です。(布施谷航)

 

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