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【首都圏】

葵町製糸場、3D画像に 東京農工大科学博物館 「幻の」建物、機械を復元

葵町製糸場の図面(下)と3D画像の復元図(いずれも東京農工大学科学博物館提供)

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 東京農工大学科学博物館(東京都小金井市)は、「幻の製糸場」とされる明治初期の官営葵町製糸場を3Dデジタル画像で復元した。ネットで寄付を募るクラウドファンディングによるプロジェクトで、所蔵する図面から、学生らが建物や機械を立体画像でよみがえらせた。 (松村裕子)

 葵町製糸場は一八七三(明治六)年に現在の東京都港区で操業開始。官営としては、世界文化遺産の富岡製糸場(群馬県富岡市)に続いて建造された洋式製糸工場だった。生糸を製造する繰糸機は富岡のフランス式に対し、イタリア式。水車が動力だったが、稼働期間が七年と短く、詳細は分かっていなかった。

 画像による復元は、二〇一六年に収蔵庫から図面四十一点が見つかったのを受けて計画した。今年二〜三月にクラウドファンディングで寄付を募ったところ、目標の二倍の二百万円余が集まった。四月から工学部の学生十一人と建築家らが3D化ソフトを使い、作業を続けていた。

繰糸機の図面(左)と3D画像の復元図

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 画像では外観と内部を再現した。建物は木造で長さ五十メートル、奥行き九メートル。図面に唯一、長さの記載があった煙突から全体の規模を割り出した。繰糸機は、現存する別の機械を参考に、平面図では分からなかった縦回転と横回転の歯車の構造を明らかにした。繭を煮るレンガ製のかまどは、十枚以上あった部分的な図面を組み上げて復元した。

 修士二年の丸山遥香さん(25)は「3D化により、イタリア式繰糸機の特徴がよく分かった」と話す。

 担当の斉藤有里加特任助教は「他の製糸場と比較しやすくなり、明治期の技術革新の経過を知るのに役立つ」と成果を強調する。

◆製糸場内外の写真見つかる 日本カメラ博物館

葵町製糸場の写真(下)を見つけた谷野さん(アルバムは復刻版)=東京都千代田区で

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 今回のプロジェクトでは葵町製糸場の外観と内部の写真も見つかり、画像復元の参考に使われた。所有する東京都千代田区の日本カメラ博物館(日本カメラ財団)が新聞記事で復元計画を知り、東京農工大に連絡した。

 全国の観光地や官公庁の写真を集めた明治期のアルバム「大日本全国名所一覧写真帖(ちょう)」に、製糸場も収録されていた。葵町工部省の「工作場」として、名刺サイズの白黒写真で紹介され、新聞記事で製糸場であることが分かったという。

 アルバムは一八八一(明治十四)年に当時の駐日イタリア大使が母国に持ち帰り、古い写真を収集している財団が数年前に購入。谷野啓(やのひろし)常務理事は「活用されてよかった。イタリア式製糸場の写真を、イタリア大使が持っていたのも何かの縁」と話す。

 

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