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【首都圏】

家事調停の世界を描く 三菱重工元社員・宗像さんが私小説

出版した私小説「死生、転機あり」を手にする宗像さん=さいたま市で

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 三菱重工原子力部の元社員で、一九七四年の同社爆破事件に遭遇した作家・宗像善樹(むなかたよしき)さん(76)=さいたま市浦和区=が、同事件や家庭裁判所の調停委員の経験を踏まえた私小説「死生、転機あり 一期一会は深い絆になる」を出版した。フィクションだが、原子力発電所の現場や、複雑な男女関係の解決が中心となる家事調停の世界を巧みに表現し、社会の深層の一端が見え隠れする内容だ。 (長竹孝夫)

 三菱重工爆破事件は、東京・丸の内で発生し、八人が死亡、三百八十五人が負傷した戦後最大の無差別爆破テロで、宗像さんも負傷した。退職後の二〇〇六〜一四年に調停委員を務めた宗像さん。さまざまな家事調停の申立人や相手方の人生に関わったことや三菱重工時代を含め「私が半生で体験した事件や出来事、味わった喜び、悲しみと苦しみ。これらを記録にとどめ、思いを込めて一冊の本にしました」と話す。

 小説の舞台は、女性が内縁関係の解消を申し立てた調停事件。複雑な過去を持つこの女性は、東京大卒の男性教員と知り合い内縁関係に。訳あって男性は東京電力福島第一原発事故後の作業員になり、多量の放射線被ばくをしたことで子づくりに消極的になるが、女性にその理由を言えない。

 そんな中、女性は「妊娠しない」と偽って男性と交渉し、やがて妊娠する。しかし、男性に打ち明けられず、口論の末に家を飛び出し、見知らぬ男と交渉。その後出産するが、やがて「(内縁の)夫の子ではない」と言う。

 女性はなぜ、内縁関係の解消に走ったのか。調停の中では、かたくなな態度を見せる男性が過去に三菱重工爆破事件に遭遇して負傷していたことが明らかに。作者自身を投影した調停委員が事件をひもときながら、二人の真相に迫るストーリーだ。

 調停の「開始」から「終了」まで、普段は垣間見られない調停室内外の描写がリアルで、ベテラン女性調停委員の心理、社会経験豊富な男性調停委員の会話も見逃せない。「死生、転機あり−」(日本橋出版)は税別千二百円。

 

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