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【社会】

<税を追う>F35A導入 防衛産業育成に1800億円 国内生産「恩恵ない」

昨年12月からF35Aのレーダー部品の製造が始まった三菱電機鎌倉製作所=神奈川県鎌倉市で、本社ヘリ「おおづる」から

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 最新鋭戦闘機「F35A」の導入を巡り、日本の防衛産業育成のために防衛省が五年前から投じた費用は千八百億円余り。だが、巨額の投資に見合うような効果はいまのところ、あまり得られていない。むしろ浮き彫りになったのは、米国の都合に左右されやすい「対外有償軍事援助」(FMS)に基づく兵器調達の実態だ。国内からは「高い税金を払っているのに恩恵がない」という批判が出ている。(「税を追う」取材班) 

 当初の想定から四年遅れた二〇一七年十二月、三菱電機の鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)で、ようやくF35Aに搭載するレーダー部品の製造が始まった。

 間もなく新たなトラブルが生じた。やっと動き始めた生産ラインの改修を迫られる事態になったのだ。

 「レーダー部品に使う集積回路(IC)が米国で枯渇しそうなので、新たなICに切り替えることになった」と防衛装備庁の担当者。ライン改修費用を盛り込んだこともあり、防衛省が一九年度予算に要求したF35Aの機体価格は一機百五十三億円と、一八年度から二十億円も跳ね上がった。

 防衛省はF35Aの生産に国内企業を参画させるため、一三〜一七年度だけで千八百七十億円(契約額)に上る資金を投入してきた。国内での機体組み立ては一三年度に予定通り始まったがエンジンやレーダーへの国産部品の搭載は遅々として進んでいない。

 背景には近年急増する米国のFMSを利用した武器取引がある。日本にとって最新兵器を入手できるメリットはあるが、価格は「言い値」で納期も米国次第。F35Aを巡る突然の部品変更は、米側の都合に振り回された結果だ。

 防衛省はF35Aの導入に当たり、米側にライセンス料を支払って国内で製造するライセンス生産を要望していたが、技術流出を懸念する米側に断られた。代わりに日本側が持ち掛けたのが、機体の組み立てや国産部品の採用だった。国産にこだわるのは技術確保への危機感だ。

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 航空自衛隊小牧基地や名古屋空港に近接する三菱重工業の工場(愛知県豊山町)では、機体の組み立てや検査が行われている。組み立ては米企業の指示に従い主翼や胴体など主要部品をつなぎ合わせる作業で、装備庁の担当者は「間近で機体に触れて作業できるので、防衛産業の育成につながる」と胸を張る。

 ただ、周囲からは冷めた目も。自衛隊の元空将は「プラモデルを組み立てるようなもので、技術の習得につながらない」と指摘する。しかも、FMSによる兵器取得はブラックボックスだらけだ。

 三菱重工業関係者は「機体の最終検査は米国技術者が担い、日本の技術者は施設内の立ち入りも許されない」と話している。

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 シリーズ「税を追う」へのご意見、情報を募集します。メールはshakai@tokyo-np.co.jp、郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「税を追う」取材班へ。

 

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