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【社会】

親の更新忘れで子に刑事罰  外国人在留カード 16歳で手続き

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 日本で暮らす外国人に交付される在留証明のカード。子どもの場合は十六歳で更新が必要だが、保護者が手続きを忘れてしまうと、親ではなく子どもが刑事罰を受ける−。そんな不条理な規定が放置されている。原因は六年前、在留管理制度を一新した際に生じた設計ミスだ。政府・与党は、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管難民法改正案の今国会成立を目指すが、人権団体などは、カードの不備を改善する法改正を急ぐよう求めている。 (出田阿生)

 非正規滞在者を減らす狙いで二〇一二年に改正入管難民法などが施行され、非正規滞在者も対象だった自治体発行の外国人登録証(外登証)は廃止。代わって国が、三カ月を超えて合法的に滞在する中長期在留者に「在留カード」、韓国・朝鮮籍の特別永住者に「特別永住者証明書」を発行するようになった。

 いずれも、子どもの更新手続きは十六歳の誕生日の半年前から可能だが、「同居の父母等」が代理で申請すると規定。本人が申請できるのは誕生日のたった一日だけだ。保護者が手続きをしなかった場合、「一年以下の懲役または二十万円以下の罰金」という刑事罰が子どもに科される。

 外登証でも、出生後の切り替え手続きは十六歳だった。誕生日から三十日以内に本人が切り替え手続きをすることになっており、手続きをしなければ義務違反として刑事罰はあった。

 法務省入国管理局は今年五月にまとめた在留管理制度の検証結果の中で、出生後の更新手続きについて「見直しに向けた検討をする必要がある」と不備を認めた。しかし、担当者は取材に「見直しの検討を始めているが、内容も時期も検討中」と早期の法改正には消極的だ。

 入管によれば、刑事罰が適用されたことはないというが、在日コリアンの人権団体は、刑事罰の廃止や更新年齢の引き上げなどを同省に要請してきた。人権団体や当事者からは「自らのミスを認めたくないのか」といぶかる声も上がる。

 外国人問題に詳しい田中宏・一橋大名誉教授は「外国籍の住民に人権を保障する観点がないから、制度設計のミスが起きる。子どもの人権侵害を防ぐために今すぐ改正が必要だ」と指摘する。在日本朝鮮人人権協会の金東鶴(キムトンハク)事務局長は「十五、十六歳の子にこれほどの負担を強いるのはおかしい。少なくとも更新年齢を十九歳の誕生日に変更し、本人が十八歳になってから申請できるようにするべきだ」と訴える。

◆「15歳の息子に不安な思い…胸痛む」

 「一人で窓口へ更新手続きに行った高校一年の息子が、不安でいっぱいの声で『親じゃないとダメだと言われた』と電話してきた。十五歳の子にそんな思いをさせて、親として胸が痛かった」

 中部地方で行政書士をしている在日コリアンの女性(49)は、新制度が発足した二〇一二年当時を振り返る。

 ちょうど長男(22)が十六歳の誕生日を迎える直前だった。女性は手続きに付き添わなかった。「息子は在日四世として日本で一生を送る。そのためには数年ごとに在留資格証明書の更新をしなければいけない。自分一人で手続きすることで、在日としてこの社会で生きていく厳しさを自覚させたかった」という親心からだった。

 だが息子からの連絡で、新制度で本人が申請できるのが誕生日の一日だけと初めて知った。「親の責任を、なぜ年端もいかない子に負わせるのか。せめて本人が十八歳以上になってから手続きをする制度に変えてほしい」

 

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