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【社会】

<地域のチカラ>エネ地産地消に企業連携 大震災が転機 小田原

メガソーラーの発電能力を紹介する「ほうとくエネルギー」の志澤昌彦副社長(左)と辻村百樹さん=いずれも神奈川県小田原市で

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 神奈川県小田原市の企業などでつくる「小田原箱根エネルギーコンソーシアム(共同事業体)」が、「エネルギーの地産地消」に取り組んでいる。地元でつくった再生エネルギーを地元で使い、収益の一部は地域に還元。東日本大震災の経験から始めた取り組みが、地域の活性化につながっている。 (山本哲正)

地元企業が共同出資して設立した「ほうとくエネルギー」のメガソーラー。同社の経営基盤となっている=本社ヘリ「おおづる」から

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◆共同蓄電池が目標

 「蓄電池などで、停電時も電気が使えるシステムを目指します」

 電気小売り「湘南電力」の社員が今月中旬、顧客の男性(69)方を訪ね、将来像を語った。男性は「地球に優しく、電気代が地域で回るのもいい」と考え、六月に契約。「いつか地域共同の蓄電池を、お金を出し合って設置したい」とにこやかに話した。

 小田原箱根エネルギーコンソーシアムは、太陽光や小水力などでエネルギーをつくる「ほうとくエネルギー」、送電する湘南電力、家庭や事業所にセールスをする「古川」「小田原ガス」など地元企業が連携してエネルギーを供給する枠組みだ。現在の顧客は家庭約千五百件、事業所約百件。

 ほうとくの志澤(しざわ)昌彦副社長(52)は「エネルギーに関心のある市民が多く、自分たちでできるという機運が高まった」。湘南電力の原正樹社長(47)は「エネルギーを送配電網を通じて買う現状から、自立の仕組みへ変えたい」と意気込む。

◆独立した供給網を

 きっかけは福島第一原発事故後の二〇一一年七月、市内で開いた公開対談だった。加藤憲一市長は、計画停電などで観光や産業が打撃を受けたため「分散、独立したエネルギー供給網を持ちたい」と訴えた。対談したNPO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「日本の発送電も戦前に大統合されるまでは群雄割拠。その体制をつくるのは十分可能」と指摘。対談にも刺激された地元企業三十八社が出資して一二年、ほうとくエネルギーが誕生した。

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 ほうとくは市内の一万八千平方メートルの土地を取得し、メガソーラーを建設。実は大手事業者も建設地として目を付けていたが、所有者の山林経営辻村百樹さん(62)が「地元にお金が落ちないと意味がない」と、ほうとくに託した。ソーラー建設費のうち約一億円は市民が出資。出力は千キロワット近く、ほうとくの主力となっている。今年二月には、市立小学校七校に太陽光パネルを設置。総発電能力は二千キロワットを超す。

 コンソーシアムの収益の一部を地域貢献に使っており、今年は中学校の「命の授業」開催費用に充てた。「古川」の古川剛士(つよし)社長(45)は「二十万人都市の小田原で電気代は年間約三百億円。一部でも地域に残し、まちづくりや教育、文化に使っていきたい」と夢を膨らませる。

<小田原箱根エネルギーコンソーシアム> 電力会社による大規模集中型エネルギーに対し、地産地消・分散型エネルギーに取り組む共同事業体。9月の北海道地震のように送電網によるブラックアウト(全域停電)が起きても、自立して電力供給できるモデルとして、小学校などに太陽光発電と蓄電池を導入した実証実験をしている。通常は送電網から料金の安い時間帯に充電し、高い時間帯に自家用に使用。非常時はそれまでの充電分のほか、太陽光からも充電して使う。

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