東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

川口いじめ、ネットに被害者名 発信者情報の開示命令

写真

 埼玉県川口市の市立中学校でいじめに遭った元男子生徒(16)が、インターネット上の「掲示板」で実名をさらされプライバシーを侵害されたとして、プロバイダー(ネット接続業者)三社に、発信者の名前などの情報を開示するよう求めた訴訟の判決が十日あり、東京地裁(志賀勝裁判長)は三社に対し、開示命令を出した。原告側代理人の荒生(あらお)祐樹弁護士は「匿名で安易にネットいじめに加担することへの警鐘になる」と評価した。

 訴状などによると、提訴は六月十二日付。元生徒の実名やあだ名をさらした四件の書き込みについて、発信者の名前と住所、メールアドレスの開示をプロバイダー三社に求めた。

 元男子生徒は、二〇一五年の入学まもなくからサッカー部内で仲間外れや暴言、暴力を受け、二年生の秋には自殺未遂を起こした。一七年十月ごろ、誰でも見られるネット掲示板に、学校名入りで元生徒のいじめが話題(スレッド)に設定され、元生徒や母親を「虚言癖がある」「モンスターペアレンツ」などと中傷し、元生徒の実名やあだ名をさらす匿名の書き込みが相次いだ。

 判決では、「いじめを受けた事実は、無限定に広まると偏見や中傷を招きやすい」とし、実名やあだ名の書き込みがプライバシーの侵害に当たると認めた。元生徒へのいじめは、今年三月に市教委の第三者委員会が認定している。

 プロバイダーから発信者情報が提供されれば、元生徒側は精神的苦痛など賠償請求が可能になり、提訴も検討している。

 プロバイダー側は取材に対し「判決文が届いていないのでコメントできない」などと答えた。

◆元市立中生徒の母親「見えぬ相手に不安強く」

 「開示命令が出てよかった。見えない相手には注意も話し合いもできず、不安が強かった」。判決を受け、元生徒の母親はほっとした表情を見せた。

 ネット掲示板への書き込みが激しくなったのは、中学校が元生徒へのいじめについて保護者説明会を開いた直後だった。校長らの説明に事実と異なる点が多く、元生徒側に問題があるとして中傷する書き込みが集中した。

 母親によると、元生徒は友達から掲示板の存在を知らされ、口を利いてもらえなくなったり、知らない生徒から指をさされたりした。「自転車に乗っていた」などと行動を監視するような書き込みもあり、外出が怖くなった。高校生になった今も、新しい友だちが掲示板を読んで離れる不安にさいなまれるという。

 荒生弁護士は「発信者を特定する裁判は時間も費用もかかり、いじめ被害者が提訴に踏み切った例はあまり聞かない。今回は元生徒や母親に、提訴することでネットいじめを減らしたいという思いが強かった」と説明。母親は「書き込んだ人には、自分が特定されることで、身元を明かさず人を傷つけた悪質性に気付いてほしい」と訴えている。 (森雅貴、柏崎智子)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報