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【社会】

はれのひ元社長 実刑 被害者、今も晴れぬ思い「成人式 悲しみ思い出す日に」 

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 振り袖販売・レンタル業「はれのひ」元社長の篠崎洋一郎被告(56)に十九日、懲役二年六月の実刑判決が言い渡された。被告は新成人の一生に一度の晴れ舞台を台無しにしただけでなく、着物業界全体の信用も失墜させた。 

 篠崎被告は成人式の晴れ着トラブルでは刑事責任を問われず、被害弁済もほとんどできていない。ずさんな経営の末に引き起こされた悲劇から間もなく一年。横浜地裁は十九日、被告に実刑判決を言い渡したが、被害者は今も晴れない思いを抱えている。

 長女が着付けを予定していた横浜市南区の高谷千恵子さん(50)は判決内容を知り、「二年六月の間に立件されなかった新成人の被害も反省してほしい」と願った。

 「詐欺に遭ったと思っている。納得がいかない」。今年の成人式のために娘の振り袖をレンタルした港南区の主婦(56)は憤りを隠さない。娘は、友人の母親の着物を借りて成人式に出席したが「せっかく一式選んだのに」とつぶやいた姿が忘れられない。「気持ちが収まる部分が少しはあるが、私たちの被害は立件されておらず、ふに落ちない」

 公判で浮き彫りになったのは、無責任な経営姿勢だった。「店舗が増えれば収益が上がると思った」。法廷に立った篠崎被告は、無謀な店舗拡大の理由をこう語った。しかし、店が増えると経費も膨らみ、自転車操業状態に陥ることに。定期的に税理士から財政状況の報告を受けていたが「経理が苦手で重要だと思っていなかった」と釈明した。

 「今更謝られても誠意を感じられない」とあきれたのは、長女が被害に遭った港北区の女性(46)。「毎年成人式が来るたびに当時の悲しみを思い出すだろう」と訴えた。

◆業界 不信解消に苦心

 「着物は不要不急と考える人が多い上、高価で、風評被害に弱い。はれのひの事件は、それまでも売り上げが低迷していた業界の状況悪化に拍車を掛けた」。「きものと宝飾社」(京都市)が発行する業界誌「ステータスマーケティング」の松尾俊亮(しゅんすけ)編集長(38)はこう解説する。

 「お宅は大丈夫なの?」「成人式当日まで倒産しないと誓約書に書いて」。騒動が起きた後、不信感を抱く客が目立つようになったという。新興店ではなく、親族や知り合いらの紹介で老舗店を利用する客が増え、二、三店舗訪れて吟味するなど慎重になった。料金は式後に払えばいいという業者も出てきている。

 松尾さんはトラブル発覚直後、「業界関係者の一人として何もしないわけにはいかない」と考えて被害者の会をつくり、電話やホームページで相談に乗った。呼び掛けに応じた約五十社の協力を得て、二百人を超える新成人が振り袖姿で撮影するなどできた。

 そうした活動を通して新成人の落胆ぶりを肌身で感じてきただけに、債権者集会を欠席した理由を「日付を確認していなかった」と公判で説明するなど、反省の態度が感じられない篠崎被告への怒りは強い。「債権者集会には何が何でも出て謝るのが社長の役目。経営者失格と言わざるを得ない」

 あと三週間余りで来年の成人式が巡ってくる。松尾さんは「着物業界で最も特別で、華やかな一日。今度こそはつつがなく、新成人の門出を祝う場になってほしい」と願っている。 (鈴木弘人)

1月8日、横浜市中区の「はれのひ」には休業を知らせる紙が掲示された

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