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【社会】

ザトウクジラの発見増える 八丈島は最北の繁殖地?

水面から頭を見せるザトウクジラ=八丈島周辺の海域で(2018年12月25日撮影、東京海洋大・八丈町提供)

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 伊豆諸島・八丈島(東京都八丈町)の周辺でザトウクジラの数が増えており、世界最北の繁殖地の可能性があることが、東京海洋大と町の調査で分かった。一シーズンで百頭を超える数や繁殖の前兆行動を確認。町は「ホエールウオッチングを新たな観光資源に」と期待している。 (榊原智康)

 海洋大によると、日本近海のザトウクジラは冬から春にかけ、沖縄などの暖かい海で出産し、夏はエサが豊富な北方のロシア・カムチャツカ半島沖で過ごす。繁殖地の北限はこれまで、鹿児島県の奄美大島周辺とされていた。

 だが、八丈島の住民が二〇一五年十一月、島周辺で初めて群れを発見。翌年から海洋大と町が共同で調査を始めたところ、一六年冬〜一七年春に六十頭、一七年冬〜一八年春に百五十一頭と急増した。今季も一八年十一月から調査を始め、既に延べ百頭以上を確認している。

 百五十一頭のうち六頭は尾びれの模様から前年と同じ個体と分かり、二年連続でやってきたことが判明。メスへの求愛の鳴き声「ソング」や、オスがメスを追い掛ける「ヒートラン」という繁殖の前兆行動も複数年、確認したという。

 調査チームは繁殖の証拠として、島周辺で赤ちゃんと母親の親子連れを探している。繁殖には浅瀬などが必要とされるが、頭数は世界的に増加傾向といい、責任者の中村玄(げん)助教(鯨類学)は「沖縄などの繁殖地が満杯状態になり、新しい繁殖地を探しているのではないか」と推測する。

 八丈町の山越整(ただし)総務課長は「口コミなどでクジラが見られるとの情報が広がっており、国内の遠方から訪れる人もいる。冬は観光のシーズンオフだったので、島の活性化につながれば」と話している。

◆東京海洋大調査「急に姿なぜ」

 「あっブロー(潮吹き)発見、出ましたぁ」。八丈島の漁港を出て二十分後。調査チームの村田陽菜(はるな)さん(22)=四年=が声を上げた。船主の赤間憲夫さん(71)が速度を上げ、ブローの発見地点に近づくと、水面に青みがかった背びれが現れた。

 ザトウクジラの体長は平均一三メートルと大型バスほどで、想像以上に大きい。慌ててシャッターを押すが、すぐに水中へ消えた。

 昨年十二月中旬、ザトウクジラの調査船に同乗した。調査船は、十六人乗りの漁船(一二トン)をチャーター。チームは大学院生ら女子二人、男子一人の三人。一人が船主の隣で指令を出し、一人が撮影、一人が記録をメモする。

 肉眼でひたすらブローを探すが、都心から約三百キロの外洋では、冬にしけることも多い。船の揺れで、記者は船内のトイレに駆け込んだ。

 この日は、海面からジャンプする姿を見ることはできなかったが、約三時間で六頭を確認。三年続けて調査に参加しているリーダーの柴田千恵理さん(24)=修士一年=は「なぜ急に姿を見せるようになったのか分からないことばかり。データを積み重ねたい」と力を込めた。

<ザトウクジラ> 歯がないヒゲクジラの一種で、赤道近くを除く世界全域の海に生息。北半球では、冬は沖縄やハワイ、メキシコ近海で繁殖し、夏はベーリング海やアラスカなどの北極近くでえさを取る。乱獲で一時激減したが、1966年に国際捕鯨委員会(IWC)が捕獲を禁止した後は増加傾向。東京海洋大によると、八丈島は繁殖地の北限とされる緯度より約500キロ北に位置する。日本はIWC脱退を決め、2019年7月から商業捕鯨を再開する方針だが、対象はミンククジラなど3種類で、ザトウクジラは含まれていない。

 

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